消費税還付スキームは今後困難に、不動産ファンド組成に影響も

ファンド組成時の消費税シミュレーションは、投資の利回りを検討する上で重要な要素です
特にマンションやアパートを運用する不動産ファンドにおいてよく見られた消費税還付スキームは、平成28年税制改正により困難になりました。

従来の税制では完全に防止できなかった消費税還付スキーム

ファンド設立初年度に課税事業者を選択してマンション取得等に係る消費税の還付を受け、その後免税事業者や簡易課税事業者になるスキームが一時期流行しました。
これに対し平成22年税制改正で、調整対象固定資産の課税仕入に係る規制が設けられました。
簡単に説明すると、課税事業者を選択した事業者等が100万円以上の固定資産を購入した場合、3年間免税事業者または簡易課税事業者になれないというものです。

しかし、例えば
● ファンド設立後2年間休眠させ、3年後にマンション等を取得する場合
(規制は「課税事業者選択の継続適用期間中(2年間)」という要件があるため)
● 上半期に1,000万円以上の課税売上高または給与を計上し、翌期自動的に課税事業者になる場合
など規制の対象から外れるケースが残されており、消費税還付スキームは依然として有効でした。
税制改正前は2年間休眠させれば「還付逃げ」が可能今回の改正は、こうしたケースを利用した租税回避を防止するものといえます。

1,000万円以上の資産取得で、3年間免税または簡易課税を適用できず

今回の改正では、高額特定資産(税抜1,000万円以上の棚卸資産または固定資産)を取得した場合、その期初から3年間、免税または簡易課税の適用が受けられなくなりました(消法12の4①)。税制改正後は3年間免税や簡易課税が適用不可にこれにより、マンション等を取得後最低2年間は何があっても免税点制度や簡易課税制度を利用できず、2年後の期末に仕入控除税額の調整が生じるものと見込まれます。

この特例は、高額特定資産を廃棄や売却したとしても継続して適用されます(消基通1-5-22の2)。
また、つい最近消費増税の延期が公表されましたが、当該高額特定資産の特例については予定通り2016年4月から施行されています。

今後マンションやアパート等の不動産ファンドを設立する際、特に注意しなければならない税制改正です。

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