ファンド監査の新しい監査報告書様式が公表②

ファンド監査など特別目的の決算書に対する監査について、Q&Aもリリースされました。
前回のコラムでご紹介した新しい監査報告書について詳しく解説しています。

ファンド監査は特別目的の決算書に対する準拠性監査に分類

前回は決算書等が一般目的か特別目的か、監査が適正性か準拠性かといったトピックが出てきて、ピンとこない点もあったかと思います。
これを具体例で整理すれば、下表の通りになります(Q&AのQ5,8参照)。
ファンド監査は特別目的の決算書に対する準拠性監査
具体的な例として見ることで、多少はイメージできたのではないかと思われます。
ファンド監査は、特別目的の枠組で作成される決算書類に対する、準拠性監査に該当することが多いと考えられます。

表の4分類のどれに該当したとしても、監査手続自体は変わることはないといえます(Q11,13参照)。
すなわち、資産・負債・損益等を適切に評価し、決算書に重要な虚偽表示がないか確認する点は共通しています。
但し、監査報告書上で意見を表明するにあたり、前回取上げたポイント①~③を検討・明記することになります。

「ファンド監査」に関連するコラム:

(2014/4/20) ファンド監査の新しい監査報告書様式が公表
(2014/4/6) 投資事業有限責任組合等のファンド監査報酬(2012年度)
(2014/3/30) ファンド監査の新しい監査基準が公表
(2014/2/23) ファンド監査に関するQ&Aの改正
(2014/2/16) ファンド監査の意見表明に変更?

ファンド監査の新しい監査報告書様式が公表

ファンド監査や年金監査といった特別目的の決算書等に対する監査について、新しい監査報告書の様式が公表されました。
公認会計士協会のHPで新様式を見ることができます。

匿名組合の監査報告書が例示

以前コラムで、目的や利用者が限定された決算書等について、特別目的の財務報告として監査のアプローチを区分する方針を取上げました。
ファンド監査はこれに該当することが多いと考えられ、今回公表された監査基準では匿名組合の監査報告書が例示として記載されています。
従来の監査報告書と比較すると、いくつかの点で違いが見られます。

ポイント①特別目的か一般目的か
決算書等が特別目的の場合、監査意見の下に以下のような記載がなされます。
「匿名組合出資者に提出するために営業者により作成されており、それ以外の目的には適合しないことがある。」

ポイント②準拠性監査か適正性監査か
特別目的の監査においては、特定の規則や契約に準拠しているか検討する「準拠性監査」となることが多いと思われます。
この場合、監査意見は「匿名組合契約~条の取決めに準拠して作成されているものと認める。」と表明するに留まります。
一方、従来の適正性監査であれば、この先に「すべての重要な点において適正に作成されている」といった意見が続きます。

ポイント③監査報告書の配布や利用が制限されているか
配布や利用に制限がある場合、監査意見の下に以下のような記載がなされます。
「営業者と匿名組合出資者のみを利用者として想定しており、営業者及び匿名組合出資者以外に配布及び利用されるべきものではない。」

匿名組合や投資事業有限責任組合といったファンド監査について、この新しい様式の監査報告書を今月から早期適用することが可能です。

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投資事業有限責任組合等のファンド監査報酬(2012年度)

ファンド監査に対する報酬(監査費用)はいくらくらいでしょうか?
投資事業有限責任組合特定目的会社といったスキームによって異なり、また運用資産や投資規模等にもよりけりですが、公認会計士協会が監査実施状況の調査結果を公表しています。

ファンド監査の報酬は数万円~数百万円以上とバラつき

SPC・組合の中では、監査が義務づけられる投資事業有限責任組合及び特定目的会社が調査対象となっています。
2012年度(2012年4月期~2013年3月期)におけるファンド監査の報酬水準は下表の通りです。

ファンド(投資事業有限責任組合、特定目的会社)の監査報酬

投資事業有限責任組合は約100万円、特定目的会社は約150万円が全体の平均値でした。
但し、監査費用の最低値と最高値の幅は極めて広いという状況がわかります。
投資収益(売上高)10億円未満で見た場合、投資事業有限責任組合は5万円~1,320万円、特定目的会社は20万円~480万円といずれも大きく乖離しています。

この乖離の原因はファンドの性質・規模等の個別性に加え、監査する側の体制によるところもあるかと考えます。
例えば、大企業の上場監査をメインとしていたり、公会計から国際監査まで全てカバーしているような監査法人の場合、ファンドの実務経験のない会計士が関与し、その非効率が監査費用の増加へつながるケースも見られます。

悠和会計事務所は、ファンド監査に特化することで、今後も必要かつ十分なサービスをリーズナブルな監査報酬により提供してゆきたいと考えます。

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ファンド監査の新しい監査基準が公表

以前のコラムで、ファンド監査に「準拠性についての意見表明」という新しいアプローチが導入されることを取上げました。
これについて、金融庁・企業会計審議会が先月公表した「監査基準の改訂に関する意見書」の中で、準拠性監査として解説しています。

ファンド監査など、特別目的の監査の位置付けを明文化

従来の適正性監査には、以下の①、②が含まれています。
①財務諸表が表示ルールに準拠しているかどうかの評価
②財務諸表が全体として適切に表示されているかについて一歩離れて行う評価

今回新設される準拠性監査では、②の一歩離れての評価は行われないと位置付けられています。
この準拠性監査は、投資事業有限責任組合匿名組合に係るファンド監査の他、年金基金計算書や各種補助金の収支計算書にも適用が可能となりそうです。
140330ファンド監査の新基準

ファンド監査の新基準は来月から早期適用も可能

改訂監査基準は、2015年4月1日以後に開始する事業年度または会計期間に係る監査から適用となります。
なお、2014年4月1日以後に発行する監査報告書から早期適用することも可能です。 

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ファンド監査に関するQ&Aの改正

ファンド監査に関してもう1件、日本公認会計士協会から「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」の改正も公表されました。

近年の会計基準改正にファンド監査指針も対応

近年、SPC・組合に関する会計基準について、多くの改正が行われました。
用語の定義から会計処理、開示方法まで見直し・新設が行われたことを受け、ファンド監査の指針もアップデートされたということです。

【主な会計基準等】
連結財務諸表に関する会計基準
一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針
特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針について のQ&A(不動産流動化実務指針Q&A)

特別目的会社の連結

SPCや組合の監査を行う上で、大きく影響を受けた会計処理の改正として記憶に残っているのは、特別目的会社の連結規定についてです。
出資者にとってSPCが連結対象か判断する際、連結除外推定(財務諸表等規則8条7項)が適用されなくなったため、出資者がSPCを新たに連結対象とするケースが生じました。

140223特別目的会社の連結

特別目的会社の連結については、現在もIFRSの支配力基準等を視野に入れ検討を重ねているとのことで、今後もファンド監査や会計基準の改正が予想されます。

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