2021年ファンド・投資環境の変化

2021年のファンド・投資環境は、新型コロナウィルス感染症への対応と経済活動の活性化へそれぞれが取組み、1年前よりも前向きな流れを感じる年となりました。
世界的な金融緩和は続く一方、アメリカでは利上げも意識され始めています。
このように世の中の動きが加速する中、ファンドの組成に関してはこれまでと変わらず多数ご相談を頂戴しました。

中小M&Aで株式の7割損金等、投資や事業承継の後押しも

2021年改正項目 影響 内容
経営資源集約化税制の創設 株式 中小企業M&Aで株式購入額の7割損金に
不動産取得税、登録免許税の軽減延長 不動産 特定目的会社や投資法人等の軽減税率が2年延長
NISA制度の改正 株式 つみたてNISAの延長等
× 社債利子の総合課税対象範囲が拡大 不動産 同族会社を間接的に保有する場合でも社債利子は総合課税に
× 匿名組合の特別償却に制限 全般 匿名組合に対し中小企業投資促進税制の適用を除外

税制改正の目玉として、経営資源集約化税制が創設されました。
中小企業M&Aで一定の要件を満たす株式売買について、購入額の7割を損金とすることが可能です。

また、不動産取得税や登録免許税の軽減措置が2年延長されました。
他にもつみたてNISAの設定期間を2042年まで延長されるなど、税制面から投資を後押しする意思を感じます。

一方、同族会社の社債利子に関し、総合課税の対象とする範囲を広げる等、富裕層の抜け穴的な節税策がまた一つなくなりました。

2022年は富裕層にとって増税方向の改正が多数見込まれる

来年2022年は、富裕層の税制優遇や節税策を縮小・廃止する改正が目立つようです。
● 住宅ローン控除の控除率引下げ (控除期間は長くなる場合も)
● 配当所得の総合課税対象範囲の拡大
● 貸付用の少額資産について損金算入特例の適用除外

少し前まで常套手段であった節税策があっという間に通用しなくなるパターンが随分増えました。
最新の税制や特例措置を確認することが重要です。

2019年ファンド・投資環境の変化

2019年のファンド・投資環境は、高い株価と安定的な為替に支えられて概ね平穏に推移しました。
ファンドの税制や会計に関しても目立った改正はなく、ファンド組成に関するご相談もオーソドックスな案件が多かった年と言えそうです。

2019年は特に大きな改正点はなし

2019年改正項目 影響 内容
不動産取得税、登録免許税の軽減延長 不動産 特定目的会社や投資法人等の軽減税率が延長
× 太陽光発電設備の即時償却規制強化 太陽光 売電の割合が2分の1超の発電設備は対象外に
ビットコイン等の税務・会計方針が明確化 全般 税務上の法定評価方法は総平均法に

不動産取得税、登録免許税の軽減措置は予想通り2年延長されました。

関連コラム:
(2019/9/12) 2019年ファンド税制  ~不動産取得税、登録免許税の軽減延長~

一方、太陽光発電設備の即時償却に関して、ますます制限が強くなりました。
売電の割合が2分の1超と見込まれる発電設備について、2019年4月以降中小企業経営強化税制の対象設備から除外されました。

この他、ビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)について、取扱いがより明確化されました。
税務面では、2つの評価方法(総平均法または移動平均法)のうち、総平均法が法定評価方法とされました。
会計においては、「仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針」の改正草案が公表されています。

2020年は海外不動産や金・地金売買による節税封じ込めへ

今年は税制面で動きがなかった反面、来年2020年は投資方針に大きな影響を与える改正が目白押しとなりそうです。
● 海外中古不動産の減価償却による節税スキームの規制
● 金・地金の売買による消費税還付スキームの規制
● NISA制度の拡充
● ベンチャー投資税制(エンジェル税制)の見直し

特に海外不動産投資は個人富裕層にとって王道の節税スキームであっただけに、改正の具体的内容が注視されています。
投資やファンドの組成は、無理な節税を狙うのではなく、利回りとリスクを吟味して行う健全な姿勢が今後はより重要になると考えます。

2018年下半期ファンド問合せ状況

ファンドの設立に関する問合せ状況を見れば、今勢いがある業界が浮かび上がってきます。
2018年の下半期は、不動産ファンドに関するお問合せが目立ちました。

不動産ファンド、ベンチャー投資に関する問合せが増加

2018年下半期ファンド問合せ(投資対象別)

ファンドの投資対象別では、問合せが多かったのは不動産ファンド、次いでベンチャー投資ファンドでした。
不動産は、特に都心の住宅やオフィス市場が堅調であったのと、不動産特定共同事業法の改正も追い風でした。

対照的に、仮想通貨については、市況悪化を反映してかご相談はめっきり減少しました。
同様に太陽光発電ファンドに関しても、固定買取価格(FIT)の下落もあってか一時期ほどのお問合せはありません。

2018年下半期ファンド問合せ(スキーム別)

ストラクチャー別に見ると、匿名組合(TK-GK)スキームと投資事業有限責任組合(LPS)で全体の9割を占めています。

新しい動きとしては、不動産特定共同事業法の改正により創設された適格特例投資家限定事業スキームが注目されています。
従来よりもリーズナブルにファンドを組成できる新スキームとして、今後積極的な活用が期待されます。

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2018年上半期ファンド問合せ状況

ファンドの設立に関するお問合せの数は昨年と同じく相応にありますが、その内容はこれまでと異なり、事業ファンドや仮想通貨関連の割合が増加しています。

事業ファンド、仮想通貨に関する問合せが増加

2018年上半期ファンド問合せ(投資対象別)

ファンドの投資対象別では、問合せが多かったのは事業ファンド、次に仮想通貨関連でした。
事業ファンドの投資対象は化粧品、中古車からアフリカの鉱山まで様々です。
一方、昨年まで上位であったベンチャー投資や不動産ファンドの割合は減少しています。
太陽光発電ファンドのご相談はほとんどありませんでした。
2018年上半期ファンド問合せ(スキーム別)ストラクチャー別に見ると、匿名組合(TK-GK)スキームが過半数で、事業や仮想通貨への投資関連が多かった結果といえます。
投資事業有限責任組合(LPS)も20%程度ありました。

事業ファンドの場合、それぞれの事業の業法や税制も勘案してファンドの組成スキームを検討することが重要となります。
より多角的な検討が必要なケースもありますので、各専門家と協業しながらご対応したいと考えます。

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仮想通貨の会計基準、ビットコイン等は時価で評価

ビットコイン等の仮想通貨は、一時期の熱狂ぶりからだいぶ落着きを取り戻したようです。
投資対象としても安定性を増したためか、ファンド設立の要望もよく聞こえます。
ここで、企業会計基準委員会から会計基準が公表されました。

活発な市場で取引される仮想通貨は時価評価

企業会計基準委員会(ASBJ)は3月14日、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」を公表しました。
公開草案の通り、活発な市場が存在する仮想通貨は市場価格を貸借対照表価額とし、簿価との差額は損益とするものとされました。
ビットコインやイーサリアム等、取引所や販売所で十分な数量及び頻度で取引されている仮想通貨がこれに該当します。

また、仮想通貨の期末保有額が重要な場合、種類ごとの保有数量、貸借対照表価額等を注記するよう定められました。
本取扱いは2018年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。

なお、日本公認会計士協会からは、「仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針」の公開草案が3月23日に公表されました。
仮装通貨に関する会計や監査のルール整備は、中長期的な発展のために歓迎すべきと考えます。

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