2016年ファンド・投資環境の変化

2016年はBrexit、トランプ氏のアメリカ大統領選勝利と海外諸国の動きに左右されながら大きく揺れた年でした。
ファンド・投資環境としては、適格機関投資家等特例業務の法改正による影響が大きかったと考えます。

適格機関投資家等特例業務、一部の小規模ファンドでは活用困難に

今年3月の金商法改正で適格機関投資家等特例業務への規制が強化され、一般投資家の範囲が投資資産を1億円以上保有する個人等に限定されました。
この他、税抜1,000万円以上の高額特定資産を取得した場合に3年間免税または簡易課税の適用が受けられなくなる消費税法改正もありました。

2016年改正項目 影響 内容
 ジュニアNISAの運用開始 個人 未成年者口座で年間80万円まで非課税
損益通算の範囲改正
個人 上場株式等と特定公社債の損益通算が可能に
上場株式等と非上場株式等の損益通算は不可能に
× 適格機関投資家等特例業務の改正法案 全般 適格機関投資家や一般投資家に規制
× 消費税還付スキームがほぼ困難に 不動産 免税・簡易課税の要件が厳格化
× 即時償却の延長の縮減 太陽光 生産性向上設備投資促進税制は50%償却or4%控除

今後ファンド設立の際はこれら法規制や税制を踏まえ、適法かつ有利な設計をより一層多面的に検討することが求められます。
来年も皆様のお力になれるよう尽力しますので、宜しくお願い申し上げます。

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(2015/2/29) 適格機関投資家等特例業務、法改正施行は2016年3月から
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(2015/7/31) オフショアファンドの配当、現地で損金算入なら課税対象に
(2015/5/31) 匿名組合出資や非上場株式も対象、1億円以上の国外転出時課税制度

2016年上半期ファンド・投資環境の変化

ファンド設立に大きな影響を与える適格機関投資家等特例業務の改正法が施行されて数ヶ月経ちました。
ファンド・投資を巡る外部環境も、中国経済懸念や日銀のマイナス金利導入、イギリスのEU離脱といったイベントを受けて転換点を迎えています。

適格機関投資家等特例業務の改正法施行、ファンド設立の傾向に変化

項目 影響 内容
 ジュニアNISAの運用開始 個人 未成年者口座で年間80万円まで非課税
× 適格機関投資家等特例業務の改正法案 全般 適格機関投資家や一般投資家に規制
× 消費税還付スキームがほぼ困難に 不動産 免税・簡易課税の要件が厳格化
× 即時償却の延長の縮減 太陽光 生産性向上設備投資促進税制は50%償却or4%控除

適格機関投資家等特例業務の法改正により、個人であれば投資資産を1億円以上保有するような富裕層以外からは出資を募ることが難しくなりました。
最近の景気の不透明感もあり、特に小規模なファンドの設立に関する問合せは減少傾向にあると感じます。

一方で、法改正後もなおファンドを組成したいと、投資家様へ熱心にアプローチし、法規制もご自身で積極的に調べてこられるような本気の方からのご相談は以前より増えています。
投資家様の層も、大口や海外のプロファンド等の割合が大きくなり、法改正が結果としてファンドの安定化に貢献している印象もあります。

ファンド組成に法改正が与える影響は小さくありません。
その中でも投資家様やファンドマネージャーのニーズを最大限満たせるご提案をしていきたいと考えます。

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2015年ファンド・投資環境の変化

今年2015年はスイスフラン・ショック、中国減速、アメリカ利上げなどのイベントに見舞われながらも、全体的には大きく崩れることなく年越しを迎えることになりました。
ファンドや投資環境としても概ね順風であったように思います。

一方、金融商品取引法の改正により、年明け間もなく適格機関投資家等特例業務に対する新規制が始まります。
また、国外転出時課税制度が創設され、オフショアファンドの現地損金配当が課税対象になるなど、海外関連税制が強化された年でもありました。

項目 影響 内容
NISA制度の拡充 個人 非課税枠が年間120万円へ拡大、ジュニアNISAも
即時償却の延長(太陽光は対象外) 両方 太陽光設備は生産性向上設備税制を適用可
×適格機関投資家等特例業務の改正法案 両方 一般投資家は投資資産1億円以上の個人などに制限
ファンド事業者や適格機関投資家にも規制
×受取配当の課税強化 法人 出資比率25%→33%超で配当100%非課税に
×国外転出時課税制度 個人 1億円以上の有価証券等所有者に国外転出時課税
×オフショアファンドの損金配当課税 法人 損金算入された外国配当は益金不算入の対象外に

来年は適格機関投資家等特例業務の規制強化に係る対応の他、税制改正では金融一体課税がポイントとなりそうです。
ファンド設立や会計・監査で引続き皆様をサポートしたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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オフショアファンドの配当、現地で損金算入なら課税対象に

オフショアファンド(海外に設立したファンド)から会社が配当を受けた場合、通常は日本側では課税されません。
この外国子会社配当の益金不算入という制度について、一部見直されました。

オフショアファンドの損金算入配当は日本側で課税対象に

オフショアファンドを含む外国子会社(6ヶ月以上にわたり25%以上出資している外国会社)からの日本の法人に対する配当について、原則として日本では95%が非課税とされます。
この益金不算入となる配当には優先株式に対する優先配当、そして従来は現地で損金算入された配当も対象とされていました。
LLCなどからのパススルー課税となる収益分配も該当していました。
オフショアファンドの配当
しかし平成27年度税制改正により、現地国で損金に算入された配当は、日本側で益金不算入の対象外となったため、今後は課税される見通しです。
オフショアファンド等の獲得した利益が現地国でも日本でも課税されない、という不均衡を解消することがその趣旨です。
なお、益金不算入の対象外とされた配当に係る外国源泉税等については、外国税額控除または損金算入が可能となります。

上記改正は2016年4月1日以後に開始する事業年度に受ける配当に適用されます。
但し、経過措置が設けられており、2016年4月1日時点で25%以上出資しているオフショアファンド等からの配当は、2年間は従前の通り課税されません。

LLCを始めとするオフショアファンドの設立に関するご相談はよくありますが、このような税制の見直しには注意が必要と考えます。

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2015年上半期ファンド・投資環境の変化

ファンドや投資環境にとって2015年はどのような動きが起きているか、この半年間の状況を整理しました。

適格機関投資家等特例業務の改正法案が成立

2015年上半期ファンド環境ファンドに大きな影響を与えるトピックとして、金融商品取引法の改正法案が先月成立し、いよいよ適格機関投資家等特例業務に対する規制強化が決まりました。
適格機関投資家等特例業務によりファンドを設立する場合、49名以下の一般投資家として出資できる層が制限されることになります。
6月3日の公布から1年以内に施行される見込です。

その他の項目はほとんど税制改正に関するものになります。
受取配当への課税強化国外転出時課税制度の創設等、法人・個人問わず課税ベースの拡大という流れが続きます。

一方で、NISA制度の拡充のように一般個人の投資を促進させる動きもあります。
プロ以外の私募ファンドへの投資は規制して、比較的安全なイメージの上場銘柄を推奨しているようです。
しかし、上場企業でも投資被害が頻発している昨今、ファンドも含め幅広い選択肢の中で自身でリスクを検討して投資を判断する方が、長期的に健全な投資環境を育てる上で大切なのではないかとも思います。

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