2015年ファンドを取巻く税制②~税制改正のマイナス項目~

ファンド・投資環境に追い風となりそうな税制改正項目として、前回はジュニアNISA等を取上げました。今回は、反対に負担増となりそうな項目を見ていきます。

受取配当への課税強化、5%以下と25~33.3%の負担増

受取配当金は出資比率によって課税される割合が異なります。
この受取配当の益金不算入の割合について、出資比率の区分が見直されました。

現行  平成27年度改正
 出資比率 課税割合 負債利子控除  出資比率  課税割合  負債利子控除 
 100%  0%  無  100%  0%  無
 25%~100%  0%  有  33.3%~100%  0%  有
25%未満  50%  有 5%~33.3%  50%  無
5%以下  80%  無

出資比率が5%以下の場合、受取配当金額の80%に対して課税されます。
また、25%~33.3%の場合も、従来非課税であったのが50%課税されるため負担増となります。
この他、証券投資信託の収益分配額が全額課税になる等の改正が行われました。

2015年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となります。

国外移住、海外転勤者の株式等含み益にも課税

1億円以上の有価証券等を有する居住者が国外移住や1年以上の海外転勤となった場合、有価証券等を譲渡したとみなして所得税が課税されることとなりました。
非上場株式やストックオプション、匿名組合への出資持分等も対象に含まれます。

本制度は、キャピタルゲインが非課税である国に出国して売却する租税回避行為を防止することが趣旨です。
ただし、未実現の利益(及び損失)に対する課税であることに配慮し、一定の措置が設けられています。
具体的には、納税猶予制度や、5年以内に帰国した場合は課税の取消しが可能とされています。

本制度は2015年7月1日以後の出国者への適用が予定されています。

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2015年ファンドを取巻く税制①~税制改正のプラス項目~

ファンド・投資環境にとって先日公表された平成27年度税制改正がどのように働くのか、まずはプラスとなる項目を整理したいと思います。

ジュニアNISAの創設、非課税枠拡大等

ジュニアNISAの創設により、未成年にも毎年80万円を上限として上場株式等の配当及び譲渡所得の非課税枠が与えられます(2016年以降)。

ジュニアNISA
通常のNISAについては、年間投資上限額が100万円から120万円に引上げられます(2016年分以降)。

また、2015年以降は1年単位で金融機関を変更できることになりました(従来は4年単位)。

即時償却延長も、太陽光設備は除外

グリーン投資減税として即時償却できる措置が1年延長されました。
ただし太陽光発電設備は延長対象から外れ、2015年3月末までとなります。

その他の項目として、エンジェル税制の適用対象となる会社の範囲が拡大されました。
高度な医療技術や付加価値の高い農林水産物の研究開発を行う会社、雇用創出事業を営む会社等が加えられています。

即時償却の延長対象から太陽光発電設備が外れたのは太陽光ファンドにとってもマイナスですが、生産性向上設備税制に基づく即時償却も活用してゆきたいと思います。

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来年の税制改正でNISAや太陽光ファンドは?

ファンドや投資環境に大きな動きがあった今年も、残すところあと2ヶ月となりました。
12月に入れば、平成27年度税制改正大綱の取りまとめが行われるものと予想されます。
ここで、8月に各府省庁から提出された税制改正要望のうち、ファンドや投資に関係ありそうな項目を見てみたいと思います。

ジュニアNISAの創設?

金融庁は、0歳~19歳の未成年者でも口座開設を認める「ジュニアNISA」の創設を要望しています。
資金拠出や運用は親権者等を想定しているようです。
他にも、投資上限額を年間120万円へ引上げる等、使い勝手の向上を図る内容が見られます。

以前NISAの注意点を取上げましたが、こういった新制度では思わぬ落とし穴がありがちですので注視したいと思います。

太陽光等についても税制優遇を

太陽光については、即時償却の適用期限を1年間延長し、2016年3月までとする要望が環境省や経産省から出されました。

その他、金融庁と環境省から、投資法人(REIT)のペイスルー課税拡充が求められています。
具体的には、投資法人が再生可能エネルギー発電設備にペイスルー課税を適用できるのは2017年3月末までに取得したものに限定するといった要件の撤廃を挙げています。

電力会社の買取問題等で揺れる太陽光ですが、今も太陽光ファンドの設立や既存ファンドへの設備売却に関する問合せがあります。
税制による一層のサポートが期待されます。

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簡易みなし仕入率の経過措置は今月末まで

以前取上げた通り、不動産ファンド等が消費税の簡易課税を選択する場合、2015年4月以降はみなし仕入率が10%引下げられます。
但し、これには経過措置が設けられており、今月末までに届出書を出せば2年間は従来の仕入率を適用することができます。

今月末までに届出書提出で2年間現行税率

2015年4月以降、みなし仕入率は以下の通り10%引下げられ、簡易課税を適用している不動産SPC等にとっては税負担が増加します。
簡易課税のみなし仕入率
なお、来月10月以降に届出を出した場合は、2015年4月以後に開始する事業年度から改正後のみなし仕入率が適用されます。

しかし、2014年9月までに簡易課税選択届出書を提出した場合、それが適用される当初2年間は現行の仕入率で計算できます。

また、既存の不動産ファンド等がいったん簡易課税不適用届出書を提出し、その後すぐ簡易課税選択届出書を出し直すといった”抜け道”的な行為を行ったとしても、改正後のみなし税率が適用されることになると考えられます。

消費税は、不動産SPCを始めとするファンド・組合の実質利回りを決定する最も重要な要素です。
ファンド設立時には、今回のような税制改正や経過措置に特に注意したいと考えます。

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エンジェル税制見直し、個人のベンチャー投資促進へ

先週政府より、個人投資家のベンチャー投資を税制面から支援する「エンジェル税制」の拡充検討が発表されました。

設立後3年未満→5年未満のベンチャー企業へ対象拡大

エンジェル税制では、個人投資家がベンチャー企業に投資する時点で、その投資家の所得税を減税する措置が設けられています。
この優遇措置は、ベンチャー企業が設立後3年未満の場合と10年未満の場合の2種類があります。
エンジェル税制

今回は、設立後3年未満の場合(上図A)の使い勝手を見直す方針で、以下のような案が検討されているとのことです。
● ベンチャー企業の要件:設立後3年未満→5年未満へ延長
● ベンチャー企業の要件:営業キャッシュフロー赤字要件を撤廃(黒字でも可能に)
● 所得から控除できる投資額の上限:現行(総所得金額の40%と1,000万円のいずれか低い金額)から引上げ

投資事業有限責任組合による投資でも適用可

エンジェル税制は、個人投資家が投資事業有限責任組合等のファンドを通じてベンチャー企業に投資する場合でも、適用することができます。
今回の見直しにより、個人投資家によるベンチャー投資の促進が期待されています。

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