2014年ファンド・投資環境の変化

今年2014年は、大きく見れば円安・株高という流れの中で、ファンドや投資環境としては追い風であった印象を受けます。
しかし、適格機関投資家等特例業務の見直しは来年早々にも動きがあると注目されており、また平成27年度税制改正への対応と年明けは慌ただしくなりそうです。

適格機関投資家等特例業務の見直しは年明けに持ち越しか

今年1年の間でファンド・投資環境に影響を与えた出来事としては、下表の通りになります。
2014年ファンド環境

ファンド設立や運用に大きな影響を及ぼす適格機関投資家等特例業務の見直し案は、特にベンチャー業界からの反発が強く、結局施行が一時見送られました。
しかし、大枠は原案のまま年明けに決まる可能性もあるとの話も聞こえており、何らかの対応は迫られることになりそうです。

また、昨日発表された平成27年度 税制改正大綱にも注意したいと思います。
NISAの非課税枠拡大、ジュニアNISAの創設
受取配当の益金不算入制度の見直し
 即時償却の1年延長、但し太陽光発電設備は除外(2015年3月末で終了) 

来年もファンド監査や設立で皆様をサポートしたいと思います。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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太陽光ファンドの所得区分②

太陽光ファンドに個人投資家が投資する場合、前回のコラムでは分配金が事業所得、不動産所得、雑所得のいずれかに区分されることを紹介しました。
ここで、事業所得と雑所得の境目というのが、ファンドであっても個人が直接売電する場合であっても重要なポイントになります。
雑所得では損益通算や即時(一括)償却が適用されない等扱いが大きく異なるため、この判断基準について補足したいと思います。

50kw以上か一定の管理を行っていれば事業所得も

事業事業かそうでないかは、事業として対価を得て継続的に行われているかどうかで判断します。
よって、臨時・単発的に投資や売電をして収益を得る場合は雑所得と考えられます。

そして、「事業として」という点で相応の規模や関与度合が求められますが、不動産のように5棟または10室以上、といった明確な基準はありません。
この点、資源エネルギー庁は個人の全量売電について「出力50kw以上」や「一定の管理を行っていること」を事業所得としての目安に挙げています。

また、過去事業所得か雑所得かで争われた判例では、以下の点が争点となっています。
● ①自己の計算と危険負担、②営利性、③有償性、④反復継続して遂行する意思、⑤社会的地位(昭和56年4月24日)
●自己の計算と危険において営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動かどうか(昭和53年10月31日)

太陽光ファンドにおいては雑所得になるケースが多いように思われます。
最終的にはそれぞれのケースによって個別検討となるため、規模・営利性・継続性・関与度合を客観的に判断することが第一かと考えます。

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太陽光ファンドの所得区分

太陽光ファンドについて、最近でも何件か問合せがあります。
固定買取価格の引下げ、電力会社の発電設備接続保留等がありましたが、ソーラーパネルの調達価格も下がっているそうで太陽光事業はまだ続きそうです。

太陽光ファンドに個人投資家が投資する場合は所得区分が問題になりますので、ファンド設立に際してしっかり説明することが重要になります。

事業、不動産、雑のいずれかに区分

有限責任事業組合(LLP)等パススルーが適用されるスキームの場合、個人投資家は自らが売電したものとして所得を申告します。
ここで、太陽光事業を個人が行う場合、原則的な取扱は下表の通りになります。

太陽光事業の所得区分

不動産所得者が賃貸ビル等に太陽光発電設備を設置する場合、余剰電力の売電(一部売電)は不動産収入になりますが、全量売電の場合は不動産所得と関連しないため雑所得または事業所得と考えられます。

また個人事業者が発電設備を設置した場合、店舗兼自宅であっても発電収入は自宅分含め全て事業所得の付随収入と考えられます。
但し、必要経費に算入する減価償却費は、総発電量のうち自宅使用割合相当を除外し、売電及び店舗使用割合相当を事業用割合として計算することとなりそうです。

なお、太陽光ファンドがTK-GKスキームの場合は、匿名組合分配益として雑所得に区分されます。
ファンド設立の段階から個人投資家の実情に合わせてスキームを検討することが大切と考えます。

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来年の税制改正でNISAや太陽光ファンドは?

ファンドや投資環境に大きな動きがあった今年も、残すところあと2ヶ月となりました。
12月に入れば、平成27年度税制改正大綱の取りまとめが行われるものと予想されます。
ここで、8月に各府省庁から提出された税制改正要望のうち、ファンドや投資に関係ありそうな項目を見てみたいと思います。

ジュニアNISAの創設?

金融庁は、0歳~19歳の未成年者でも口座開設を認める「ジュニアNISA」の創設を要望しています。
資金拠出や運用は親権者等を想定しているようです。
他にも、投資上限額を年間120万円へ引上げる等、使い勝手の向上を図る内容が見られます。

以前NISAの注意点を取上げましたが、こういった新制度では思わぬ落とし穴がありがちですので注視したいと思います。

太陽光等についても税制優遇を

太陽光については、即時償却の適用期限を1年間延長し、2016年3月までとする要望が環境省や経産省から出されました。

その他、金融庁と環境省から、投資法人(REIT)のペイスルー課税拡充が求められています。
具体的には、投資法人が再生可能エネルギー発電設備にペイスルー課税を適用できるのは2017年3月末までに取得したものに限定するといった要件の撤廃を挙げています。

電力会社の買取問題等で揺れる太陽光ですが、今も太陽光ファンドの設立や既存ファンドへの設備売却に関する問合せがあります。
税制による一層のサポートが期待されます。

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(2014/4/13) エンジェル税制見直し、個人のベンチャー投資促進へ

ファンドの不動産流動化指針を改正へ

先日公認会計士協会より、「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」及びそのQ&Aの改正案が公表されました。

● 不動産の売却処理に係るリスク割合について、経過措置(10%基準)の削除
● 不動産の流動化取引の更新時の適用及び会計処理の明確化
● その他字句・体裁等の修正

不動産流動化の5%ルールは健在

上記1点目について、不動産をファンド(特別目的会社)に譲渡する際、リスク及び経済価値のほとんどがファンドに移転すれば、譲渡人は当該不動産を売却したものとして処理することができます。
すなわち、不動産を貸借対照表から切離し、売却損益を計上することができるため、この「リスク及び経済価値のほとんどが移転」したかどうかが重要なポイントになります。

そして、譲渡人は(リスク負担額 ÷ 不動産時価)がおおむね5%以内であれば、リスク等がほとんど移転したとして売却処理が可能となります。
例えば譲渡人が不動産引渡後もファンドに出資する場合、その投資額が時価の5%を超えていれば売却したことにはならず、また買戻し義務を負っているような場合も同様です。
不動産流動化の5%ルール
不動産市況は好転の兆しを見せ、ファンド設立・組成も増え始めてきました。
会計基準や指針についても、今一度確認・検討していきたいと考えます。

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