ファンド監査の意見表明に変更?

投資事業有限責任組合匿名組合といったファンド監査に一部変更が検討されています。
監査手続自体は従来通りリスク・アプローチに基づき実施するのですが、監査契約の締結・更新、そして監査意見の形成の際に、目的や位置付けを一層明確にするとの見込です。

財務報告を一般目的と特別目的に区分

日本公認会計士協会は現在、「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」(公開草案)について、2月17日まで意見を募集しています。

公開草案によれば、特別目的、すなわち特定の利用者のニーズを満たすよう作成された財務諸表については、従来の適正性に関する意見表明が馴染まないことが多いとあります。
このような場合には、準拠性(財務諸表の作成にあたり適用された会計基準に準拠して作成されているかどうか)について意見を表明することが適切ということです。

              一般目的                     特別目的         
利用者      広範囲の利用者          特定の利用者

監査意見    適正性(の場合が多い)      準拠性(の場合が多い)

具体的な     金融商品取引法           社債、借入、匿名組合等の契約
枠組例 (※)    会社法                 投資事業有限責任組合に関する法律                                        年金基金

※ 一般目的であっても適正性に関する意見表明に馴染まないケースもあり、この場合は準拠性に関する意見を表明することが考えられる

ファンド監査への影響

投資事業有限責任組合や匿名組合においては、特定の投資家や金融機関に対する財務報告がなされていることが多いと考えられます。
今後それらのファンド監査については、特別目的の財務諸表の監査を実施することになると思われます。
具体的には、監査報告書に作成目的や想定利用者、強調事項として「他の目的には適合しないことがある旨」等を記載した上で、準拠性について監査意見を表明することが想定されます。

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(2014/2/9) 投資事業有限責任組合の監査指針を改正

投資事業有限責任組合の監査指針を改正

ファンド監査が義務づけられている投資事業有限責任組合について、「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い(業種別委員会実務指針第38号)」の改正が公表されました。

投資事業有限責任組合監査の改正点

主な改正点として、付録1に「注記のひな型」が追加されました。
記載上の注意が新設されており、組合設立の際に決定した存続期限を延長する場合の情報開示等が盛込まれています。

その他、投資事業有限責任組合の投資対象が他のファンド持分等である場合、投資先のファンドについても監査上より慎重に検討しなければならないと記載されました(74項)。
無題2
投資事業有限責任組合(LPS)は、先日ベンチャー投資促進税制で取上げたばかりですが、今回はファンド監査の実務指針についても改正されました。
それだけ活用される機会が多くなり、適格機関投資家やファンドマネージャーからも注目されていることが考えられます。

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(2014/1/26) 投資事業有限責任組合を活用したベンチャー投資で8割が損金に

ファンド設立における不動産取得税(5分の3控除)

ファンド設立に関する税務にとって、もう1つ良い情報を取上げたいと思います。

特定目的会社(TMK)、投資法人(Jリート)、投資信託等が負担する不動産取得税は、本来の不動産価格の5分の2相当をベースに計算できる特例が設けられています。 
このファンド組成に有利な特例が、平成25年度の税制改正により2年延長され2015年3月31日まで適用できることとなりました(地法附則11③~⑤)。

ファンドの収支に対して、不動産取得税や固定資産税といった税金コストが与える影響は決して小さくありません。
このような税制特例は、ファンド設立を検討する上で大変ありがたいサポートになると考えられます。

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(2014/1/26) 投資事業有限責任組合を活用したベンチャー投資で8割が損金に

投資事業有限責任組合を活用したベンチャー投資で8割が損金に

投資事業有限責任組合を活用するベンチャー投資促進税制が、平成26年度税制改正により創設されました。
ファンドへの追い風となるか注目されています。

ベンチャー投資促進税制の概要

この制度は、法人が投資事業有限責任組合(LPS)を通じてベンチャー企業の株式に出資した場合、株価の80%を準備金方式で損金算入できるというものです。

ベンチャー投資促進税制

当該準備金は翌期に取崩して益金算入されますが、翌期末に再度積立てることが可能で、株式を保有している限り、ファンドの存続期間中その益金を繰延べることができます。

投資事業有限責任組合のポイント

● 平成26年4月1日~平成29年3月31日までに、産業競争力強化法に定める投資事業計画について認定を受けた投資事業有限責任組合が対象

● 法人は有限責任組合員に限られる

● 適格機関投資家の場合は株式等を簿価20億円以上有し、投資事業有限責任組合への出資予定額が2億円以上であること

その他にもファンドの投資先や適格機関投資家についていくつかの条件はありますが、この制度の創設により投資事業有限責任組合を活用してファンドの設立や投資が活発になることを希望します。

ファンドに簡易課税のみなし仕入率引下げが与える影響

昨年末のお話になりますが、平成26年度税制改正大綱が12月24日に閣議決定されました。
消費増税関連はもちろん、他にも大企業でも交際費が50%認められるとか、給与所得控除の上限引下げとか、関心をもった方もいらっしゃるかと思います。

ファンド・組合に関係しそうな改正点といえば、まず消費税の簡易課税制度についてでしょう。
平成27年4月1日以後に開始する課税期間から、みなし仕入率が以下の通り引下げられます。
● 金融業及び保険業:60%→50%
● 不動産業:50%→40%

これにより、不動産SPCが簡易課税を適用することで計算される仕入税額控除の額が、課税売上高の50%→40%へ減少することになります。
例えば、特定目的会社(TMK)匿名組合ファンド(TK-GK)を設立し、賃貸用オフィスを取得したケースを考えます。
賃料収入が年間5千万円で、3年後に簡易課税適用の届出を行った場合、このファンドの消費税額は以下の通り考えられます。

(改正前)50,000,000 ×(1 - みなし仕入率50%) × 10% = 2,500,000
(改正後)50,000,000 ×(1 - みなし仕入率40%) × 10% = 3,000,000

上記の例では、改正前と比べると改正後の不動産SPCの消費税額が500,000円増えることになりそうです。
当然この分だけ収益性が低下することになりますので、ファンド設立や監査の時にスキームを検討する際には十分注意したいと思います。

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