ファンド設立における不動産取得税(5分の3控除)

ファンド設立に関する税務にとって、もう1つ良い情報を取上げたいと思います。

特定目的会社(TMK)、投資法人(Jリート)、投資信託等が負担する不動産取得税は、本来の不動産価格の5分の2相当をベースに計算できる特例が設けられています。 
このファンド組成に有利な特例が、平成25年度の税制改正により2年延長され2015年3月31日まで適用できることとなりました(地法附則11③~⑤)。

ファンドの収支に対して、不動産取得税や固定資産税といった税金コストが与える影響は決して小さくありません。
このような税制特例は、ファンド設立を検討する上で大変ありがたいサポートになると考えられます。

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(2014/1/26) 投資事業有限責任組合を活用したベンチャー投資で8割が損金に

投資事業有限責任組合を活用したベンチャー投資で8割が損金に

投資事業有限責任組合を活用するベンチャー投資促進税制が、平成26年度税制改正により創設されました。
ファンドへの追い風となるか注目されています。

ベンチャー投資促進税制の概要

この制度は、法人が投資事業有限責任組合(LPS)を通じてベンチャー企業の株式に出資した場合、株価の80%を準備金方式で損金算入できるというものです。

ベンチャー投資促進税制

当該準備金は翌期に取崩して益金算入されますが、翌期末に再度積立てることが可能で、株式を保有している限り、ファンドの存続期間中その益金を繰延べることができます。

投資事業有限責任組合のポイント

● 平成26年4月1日~平成29年3月31日までに、産業競争力強化法に定める投資事業計画について認定を受けた投資事業有限責任組合が対象

● 法人は有限責任組合員に限られる

● 適格機関投資家の場合は株式等を簿価20億円以上有し、投資事業有限責任組合への出資予定額が2億円以上であること

その他にもファンドの投資先や適格機関投資家についていくつかの条件はありますが、この制度の創設により投資事業有限責任組合を活用してファンドの設立や投資が活発になることを希望します。

ファンドに簡易課税のみなし仕入率引下げが与える影響

昨年末のお話になりますが、平成26年度税制改正大綱が12月24日に閣議決定されました。
消費増税関連はもちろん、他にも大企業でも交際費が50%認められるとか、給与所得控除の上限引下げとか、関心をもった方もいらっしゃるかと思います。

ファンド・組合に関係しそうな改正点といえば、まず消費税の簡易課税制度についてでしょう。
平成27年4月1日以後に開始する課税期間から、みなし仕入率が以下の通り引下げられます。
● 金融業及び保険業:60%→50%
● 不動産業:50%→40%

これにより、不動産SPCが簡易課税を適用することで計算される仕入税額控除の額が、課税売上高の50%→40%へ減少することになります。
例えば、特定目的会社(TMK)匿名組合ファンド(TK-GK)を設立し、賃貸用オフィスを取得したケースを考えます。
賃料収入が年間5千万円で、3年後に簡易課税適用の届出を行った場合、このファンドの消費税額は以下の通り考えられます。

(改正前)50,000,000 ×(1 - みなし仕入率50%) × 10% = 2,500,000
(改正後)50,000,000 ×(1 - みなし仕入率40%) × 10% = 3,000,000

上記の例では、改正前と比べると改正後の不動産SPCの消費税額が500,000円増えることになりそうです。
当然この分だけ収益性が低下することになりますので、ファンド設立や監査の時にスキームを検討する際には十分注意したいと思います。

ファンドのトレンド

私が監査法人に所属していた頃、特に2005年以降ベンチャーキャピタルの監査を担当することがよくありました。
ファンドを設立して投資家からお金を募り、上場(IPO)を目指す未公開会社の株式に投資するというもので、主に投資事業有限責任組合(LPS)や任意組合が組成されていました。

ライブドアを始めとして若手経営者が会社を次々と上場させ、ファンドもそういった会社の成長性に投資するための器として盛んに組成されていました。
NHKの「ハゲタカ」というファンドを舞台にしたドラマが人気となり、また会計監査がテーマのドラマ「監査法人」が放映されたのもこの頃だったように思います。

同じ時期、不動産ファンドが活況でした。
地価の上昇に乗ってオフィス、商業施設、レジデンス(住宅)の開発が進み、資金調達の手段として活用されたのが特別目的会社(SPC)でした。
ここでは、金融機関からノンリコース・ローンを調達するため、匿名組合ファンド(TK-GK)特定目的会社(TMK)といった法人格を有するスキームが次々に設立されました。

これらベンチャーキャピタルファンドや不動産SPCはリーマンショック、その後の金融危機により勢いを潜め、替わりに事業再生ファンドが積極的に登場するようになりました。
その特徴としては、単なる資金を調達する器に留まらず、人材(経営陣や監査役)を参画させるケース、政府や自治体がスポンサーとして主導するケース等、案件や目的に応じて多様かつ柔軟なファンド設計が行われていた点が挙げられます。

そして今、株高・地価回復・円安というトレンドの中で、IPOや不動産市場が活気づいてきています。
かつてのように不動産SPCが盛り返すのか、あるいは全く新しいスキームが登場するのか、ファンド監査も変わるのか・・・目が離せないこの頃です。

ファンドについて

みなさんは、ファンドと聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか?

ファンドに対していいイメージやネガティブなイメージ、なんだかよくわからないといった印象をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

日々ファンド監査や組成・設立を行っていて思うのは、ファンドや組合はある特定の目的を効果的・効率的に達成するための大変便利なツールになりうるということです。

特定の目的とは、短期的に収益を上げて分配することだけではなく、会社や事業の成長を支援することや、共同で事業組合を設立してノウハウを蓄積・共有することも挙げられます。
また効果的・効率的とは、手軽にコストを抑えて組成するケースもあれば、逆にファンド監査等により安全性や信頼性を高めるよう設計することもあります。

このように、様々な目的や方針に照らして関係者(投資家、事業者、運用者等)のニーズに最も適うよう組成・運用する仕組みがファンドというものかと考えます。 従って、関係者の考え方によって設立形態や監査等の設計は異なり、また景気やトレンドによってもその傾向が読み取れるように思います。

次の機会ではその辺りの傾向や最近のファンドの流れについても触れてゆきたいと思います。

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