2015年ファンド・投資環境の変化

今年2015年はスイスフラン・ショック、中国減速、アメリカ利上げなどのイベントに見舞われながらも、全体的には大きく崩れることなく年越しを迎えることになりました。
ファンドや投資環境としても概ね順風であったように思います。

一方、金融商品取引法の改正により、年明け間もなく適格機関投資家等特例業務に対する新規制が始まります。
また、国外転出時課税制度が創設され、オフショアファンドの現地損金配当が課税対象になるなど、海外関連税制が強化された年でもありました。

項目 影響 内容
NISA制度の拡充 個人 非課税枠が年間120万円へ拡大、ジュニアNISAも
即時償却の延長(太陽光は対象外) 両方 太陽光設備は生産性向上設備税制を適用可
×適格機関投資家等特例業務の改正法案 両方 一般投資家は投資資産1億円以上の個人などに制限
ファンド事業者や適格機関投資家にも規制
×受取配当の課税強化 法人 出資比率25%→33%超で配当100%非課税に
×国外転出時課税制度 個人 1億円以上の有価証券等所有者に国外転出時課税
×オフショアファンドの損金配当課税 法人 損金算入された外国配当は益金不算入の対象外に

来年は適格機関投資家等特例業務の規制強化に係る対応の他、税制改正では金融一体課税がポイントとなりそうです。
ファンド設立や会計・監査で引続き皆様をサポートしたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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2015年上半期ファンド・投資環境の変化

ファンドや投資環境にとって2015年はどのような動きが起きているか、この半年間の状況を整理しました。

適格機関投資家等特例業務の改正法案が成立

2015年上半期ファンド環境ファンドに大きな影響を与えるトピックとして、金融商品取引法の改正法案が先月成立し、いよいよ適格機関投資家等特例業務に対する規制強化が決まりました。
適格機関投資家等特例業務によりファンドを設立する場合、49名以下の一般投資家として出資できる層が制限されることになります。
6月3日の公布から1年以内に施行される見込です。

その他の項目はほとんど税制改正に関するものになります。
受取配当への課税強化国外転出時課税制度の創設等、法人・個人問わず課税ベースの拡大という流れが続きます。

一方で、NISA制度の拡充のように一般個人の投資を促進させる動きもあります。
プロ以外の私募ファンドへの投資は規制して、比較的安全なイメージの上場銘柄を推奨しているようです。
しかし、上場企業でも投資被害が頻発している昨今、ファンドも含め幅広い選択肢の中で自身でリスクを検討して投資を判断する方が、長期的に健全な投資環境を育てる上で大切なのではないかとも思います。

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匿名組合出資や非上場株式も対象、1億円以上の国外転出時課税制度

1億円以上の有価証券等を有する居住者が海外へ転居する場合等に含み益に課税される制度(国外転出時課税)が始まります。
適用開始が2015年7月1日と目前ですが、どういうケースが対象か細かい留意点がたくさんあります。

匿名組合出資や非上場株式も対象、1億円以上の国外転出時課税制度

① 非上場株や匿名組合出資も含め有価証券等1億円以上

本制度によって課税される対象は、主に以下の通りです。
● 株式(非上場株式、外国株式も含む)、国債、投資信託
● 匿名組合出資
● ストックオプション
● 未決済のデリバティブ

基準となる1億円は時価評価額のため、株高・円安時においては上場株や外貨建資産により対象となる可能性が高まります。
また、非上場株式であれば会社の規模等に応じて類似業種比準価額方式や純資産価額方式等により評価し、匿名組合出資であれば匿名組合契約が終了したとする場合の分配清算金相当額により評価します。

② 国外転出の前10年以内に日本に住んでいた期間の合計が5年超

就業ビザによる滞在であれば、その期間は国内居住期間から除かれます。
よって、転勤等で日本に滞在する外国人駐在員(エキスパット)が帰国する場合には、本制度の対象とならないことが多いと思われます。

③ 1年以上の海外転勤者、非居住者への贈与・相続等も対象

国外移住だけでなく1年以上海外へ転勤する場合、居住者が非居住者へ有価証券等を贈与する場合等も対象となります。

なお、本制度では納税猶予や、5年以内に帰国した場合における課税の取消しといった配慮措置が設けられています。
但し、この帰国後の課税の取消しについて、帰国まで引続き所有している有価証券等に限る、帰国後4ヶ月以内に更正の請求が必要等の注意点があります。

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2015年ファンドを取巻く税制③~不動産取得税、登録免許税の軽減~

今回もファンド・投資環境に様々な影響を与えた税制改正。
その他細かい改正項目も追っていきたいと思います。

不動産取得税、登録免許税の軽減措置を延長

特定目的会社、投資信託、投資法人(Jリート)等が物件を取得する際に負担する不動産取得税について、5分の3相当を控除できる特例が2年延長され、2017年3月末までとなりました

不動産特定共同事業法に基づき取得した新築家屋等についても、不動産取得税の2分の1軽減措置が2017年3月末まで延長されました。

また、登録免許税の軽減措置も2017年3月末まで延長されています。
● 所有権移転登記:通常1000分の20 →1000分の13
● 保存登記(不動産特定共同事業法のみ):通常1000分の4 → 1000分の3

なお、軽減措置の対象となる不動産について、従来除かれていた倉庫等の物流施設が加えられました。

ファンドの不動産取得税、登録免許税の軽減措置
ファンド設立の際にはこうした税金コストは無視できません。
軽減措置の延長や倉庫等の追加は、今後のファンドにとってうれしいサポートになります。

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2015年ファンドを取巻く税制②~税制改正のマイナス項目~

ファンド・投資環境に追い風となりそうな税制改正項目として、前回はジュニアNISA等を取上げました。今回は、反対に負担増となりそうな項目を見ていきます。

受取配当への課税強化、5%以下と25~33.3%の負担増

受取配当金は出資比率によって課税される割合が異なります。
この受取配当の益金不算入の割合について、出資比率の区分が見直されました。

現行  平成27年度改正
 出資比率 課税割合 負債利子控除  出資比率  課税割合  負債利子控除 
 100%  0%  無  100%  0%  無
 25%~100%  0%  有  33.3%~100%  0%  有
25%未満  50%  有 5%~33.3%  50%  無
5%以下  80%  無

出資比率が5%以下の場合、受取配当金額の80%に対して課税されます。
また、25%~33.3%の場合も、従来非課税であったのが50%課税されるため負担増となります。
この他、証券投資信託の収益分配額が全額課税になる等の改正が行われました。

2015年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となります。

国外移住、海外転勤者の株式等含み益にも課税

1億円以上の有価証券等を有する居住者が国外移住や1年以上の海外転勤となった場合、有価証券等を譲渡したとみなして所得税が課税されることとなりました。
非上場株式やストックオプション、匿名組合への出資持分等も対象に含まれます。

本制度は、キャピタルゲインが非課税である国に出国して売却する租税回避行為を防止することが趣旨です。
ただし、未実現の利益(及び損失)に対する課税であることに配慮し、一定の措置が設けられています。
具体的には、納税猶予制度や、5年以内に帰国した場合は課税の取消しが可能とされています。

本制度は2015年7月1日以後の出国者への適用が予定されています。

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