ファンド監査とビットコイン監査の違いは?

ファンド監査は、投資事業有限責任組合(LPS)特定目的会社(TMK)といったスキームにおいて義務づけられています。
一方、ビットコイン等の交換業者に対しても、分別管理監査が内閣府令により定められています。
但し、この分別管理監査はいわば広義の監査であり、通常の財務諸表監査とは異なる「合意された手続」に該当するため注意が必要です。

ファンド監査は特別目的の監査、ビットコイン監査は「合意された手続」

上場(金商法)監査
会社法監査
ファンド監査 ビットコイン業者の監査
(合意された手続)
手続の対象 広範囲の利用者を想定した
汎用性高い決算書
特定の利用者を想定した
テーラーメイド型の決算書
特定の財務情報等のみ
性質 決算書が適正に作成されて
いるか意見を表明
会計基準や組合契約に準拠して
作成されているか意見を表明
合意された範囲で確認・検証を行い、
その結果を報告
水準
すべての重要な点において
適正に作成されているか判断

監査報告書の配布や利用に制限

保証業務ではない
(全体的な結論や意見は表明しない)

ファンド監査の多くは、特別目的の決算書を対象とし、準拠性の枠組みになるというコラムを以前エントリーしました。
上場(金商法)監査や会社法監査と異なり、財務諸表全体の適正性を保証するものではありませんが、組合契約等に準拠しているか意見を表明します。

一方、ビットコイン等の交換業者に対する手続は、あくまで会計士等が合意された範囲で特定の事項を確認するものです。
これについて、日本公認会計士協会から「仮想通貨交換業者における利用者財産の分別管理に係る合意された手続業務」が公表されています。

手続の水準としては、上場監査・会社法監査 > ファンド監査 > ビットコイン業者の合意された手続というイメージです。
ファンド設立に際して、監査の有無や投資家保護の水準を協議することがありますので、各手続の違いを理解することが重要です。

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