太陽光発電設備、税制優遇は事業用電力として使用する場合のみに限定

太陽光発電設備を即時償却(一括償却)できるのは、電力の一部を「指定事業」に使用するなど一定の要件を満たす場合に限られます。
認定発電設備以外であればグリーン投資減税による30%の特別償却もありましたが、2018年3月末をもって廃止が決定しました。

太陽光発電設備の優遇措置は中小企業経営強化税制のみに

180222 太陽光設備等の即時償却・税額控除等税制グリーン投資減税は、2018年3月末をもって廃止されます。
替わりに省エネ再エネ高度化投資促進税制が創設されました。

この内、再エネ投資促進税制は、2018年4月~2020年3月までの間に再生可能エネルギー発電設備等を取得・使用した場合、取得価額の20%の特別償却を可能とする制度です。
但し、太陽光・風力は対象外とされ、中小水力・バイオマス・地熱等が認められています。

以上から、2018年4月以降、太陽光発電設備に関する税制優遇措置は中小企業経営強化税制のみとなります。
太陽光ファンドの設立は、今後税務メリットではなく投資収益性を基準として検討することとなりそうです。

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太陽光発電設備の即時償却(一括償却)、一部売電では可能に

太陽光発電設備の即時償却(一括償却)は、全量売電の場合は現在認められていません。
ただし、発電の一部を「指定事業」に使用するケースでは、中小企業投資促進税制を改組した中小企業経営強化税制により即時償却が可能な場合があります。

中小企業経営強化税制で事業用の電力設備は即時償却が可能

中小企業庁の中小企業経営強化税制Q&A集で、「売電のみを目的とした太陽光発電設備の導入は対象になるのか(共-23)」との質問に対し、以下の通り回答されています。

全量売電の場合には、電気業の用に供する設備になると考えられます。電気業については中小企業経営強化税制の指定事業に含まれておらず、対象となりませんのでご注意ください。
但し、その営む事業が指定事業に該当し、全量売電ではなく発電した電気の一部をその指定事業に使用している場合(例えば製造業の工場で使用)については、対象となります。

従って、太陽光発電設備を2019年3月までに事業用として使用した場合、一定の要件を満たせば即時償却が可能です。
① 特定経営力向上設備等(生産性1%以上向上または投資収益率5%以上)に該当すること
② 全量売電ではなく、一部または全部を「指定事業」の用に供すること(電気業は対象外)
③ 中小企業者等(資本金1億円以下の法人、個人事業主等)であること 等
太陽光設備等の即時償却・税額控除等税制※中小企業者等の場合は税額控除も適用可能
● グリーン投資減税:7%
● 中小企業経営強化税制:10%または7%(資本金3,000万円超1億円以下の場合)

太陽光ファンドを設立する際、償却は税務上の重要な検討事項です。
中小企業経営強化税制やグリーン投資減税を把握した上で、最適な処理を選択することが大切です。

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太陽光発電設備の即時償却(一括償却)、2016年4月以降可能な場合も

太陽光発電設備の即時償却(一括償却)は、生産性向上設備投資促進税制により2016年3月末まで可能でした。
4月以降でも「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」の適用により、即時償却が可能な場合があります。

中小企業投資促進税制で事業用電力設備は2017年3月まで即時償却が可能

太陽光発電設備を2017年3月までに事業用として使用した場合、一定の要件を満たせば中小企業投資促進税制の上乗せ措置により即時償却が認められます。
① 特定生産性向上設備等(1%以上の生産性向上等)に該当すること
② 「指定事業」の用に供すること(電気業は対象外)
③ 中小企業者(資本金1億円以下の法人、個人事業主等)であること
例えばメーカーが工場の屋根に太陽光発電設備を設置し、工場の電力として使用するのであれば要件を満たすことになります。
太陽光設備等の即時償却・税額控除等税制

その他、従来より改正された点は以下の通りです。

● 生産性向上設備投資促進税制でも50%償却は可能
● 太陽光発電設備のうち、認定発電設備(固定価格買取制度の認定を受けた売電用設備)はグリーン投資減税の適用対象外に
● 風力発電設備はグリーン投資減税の即時償却の対象外に 

太陽光ファンドの設立や売却のご相談も依然として多く、その際にどのように償却するのかは重要なポイントです。
太陽光に関連する税制は年々複雑化が進んでおり、取得や系統連系の時期も踏まえた検討が必要です。

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太陽光発電設備の即時償却(一括償却)、適用条件に注意

太陽光発電設備について、グリーン投資減税による即時償却(一括償却)が今月末で終了します。
今後は即時償却を受けるためには、生産性向上設備投資促進税制の適用を検討したいところです。

生産性向上設備投資促進税制では2016年3月まで即時償却が可能

太陽光発電設備を2015年4月~2016年3月までに取得した場合、グリーン投資減税制度では30%特別償却のみが認められます。
一方、生産性向上設備投資促進税制では、先端設備(A類型)または生産ラインやオペレーションを改善する設備(B類型)の要件を満たせば2016年3月まで即時償却が認められています。

グリーン投資減税と生産性向上設備投資促進税制による即時償却

太陽光発電設備以外の風力、地熱等については、いずれの税制でも2016年3月までの取得で即時償却が可能です。
なお、グリーン投資減税制度を適用する場合は取得から1年以内、生産性向上設備投資促進税制の場合は上表の期間内に事業の用に供することが必要です。

太陽光ファンドに個人が投資する場合は即時償却の適用に注意

即時償却や税額控除は、あくまで事業所得の計算にあたって選択適用できる特例です。
よって、個人にとって売電収入が不動産所得や雑所得に該当する場合、即時償却等を適用することはできません。
太陽光ファンドからの分配が雑所得にあたる場合や賃貸ビルに太陽光発電設備を設置している場合は注意が必要です。

最近は太陽光ファンドを新規に設立して売電するケースだけではなく、既存の太陽光発電設備をファンドに売却したいというご相談も増えています。
太陽光を巡る情勢や税制も固定価格買取制度がスタートした時から大きく変化しているため、綿密な検討が重要になります。

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太陽光ファンドの所得区分②

太陽光ファンドに個人投資家が投資する場合、前回のコラムでは分配金が事業所得、不動産所得、雑所得のいずれかに区分されることを紹介しました。
ここで、事業所得と雑所得の境目というのが、ファンドであっても個人が直接売電する場合であっても重要なポイントになります。
雑所得では損益通算や即時(一括)償却が適用されない等扱いが大きく異なるため、この判断基準について補足したいと思います。

50kw以上か一定の管理を行っていれば事業所得も

事業事業かそうでないかは、事業として対価を得て継続的に行われているかどうかで判断します。
よって、臨時・単発的に投資や売電をして収益を得る場合は雑所得と考えられます。

そして、「事業として」という点で相応の規模や関与度合が求められますが、不動産のように5棟または10室以上、といった明確な基準はありません。
この点、資源エネルギー庁は個人の全量売電について「出力50kw以上」や「一定の管理を行っていること」を事業所得としての目安に挙げています。

また、過去事業所得か雑所得かで争われた判例では、以下の点が争点となっています。
● ①自己の計算と危険負担、②営利性、③有償性、④反復継続して遂行する意思、⑤社会的地位(昭和56年4月24日)
●自己の計算と危険において営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動かどうか(昭和53年10月31日)

太陽光ファンドにおいては雑所得になるケースが多いように思われます。
最終的にはそれぞれのケースによって個別検討となるため、規模・営利性・継続性・関与度合を客観的に判断することが第一かと考えます。

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