一定の要件を満たすベンチャー投資について投資額の25%を所得控除できるオープンイノベーション促進税制。
従来は新規出資する場合のみが対象でしたが、既存株式を取得するM&A型も新設されました。
5億円以上の株式取得M&Aでも25%所得控除
オープンイノベーション促進税制は、経済産業省の証明を受けたスタートアップ企業である「特別新事業開拓事業者」への株式投資に対し、取得価額の25%を所得控除する税制です。
従来の新規出資型に加え、2023年税制改正ではM&A型が新設されました。
新規出資型 | 【新設】M&A型 | |
取得の形態 | 取得の形態 | 既存株主から議決権の50%超を購入 |
下限 (1件当たり) |
中小企業:1,000万円以上 大企業:1億円以上 外国法人:5億円以上 |
5億円以上 |
上限 (1件当たり) |
~50億円 (所得控除12.5億円) |
~200億円 (所得控除50億円) |
投資先の条件 | 設立10年未満 (研究開発型ベンチャーは15年) |
設立10年未満の内国法人のみ |
保有見込期間 | 3年 | 5年 |
取崩し (益金算入) 事由 |
・3年以内に売却 等 | ・5年以内に成長要件を達成できなかった場合 ・過半数を有しなくなった場合 等 |
関連コラム:
(2020/2/29) 2020年ファンド・投資税制① ~ベンチャー投資税制で25%控除~
(2021/6/28) 2021年ファンド・投資税制② ~中小企業M&Aで株式購入額の7割損金に~
M&A型は成長要件未達や将来売却により節税メリット消失
新規出資型は3年以内の売却等、一定の取崩し事由に該当した場合には所得控除された額が益金算入されます。
すなわち、3年以上保有後に売却すれば、トータルで125%損金計上できる可能性があります。
(出資時25% + 売却時100%)
【新規出資型の主な取崩し(益金算入)事由】
● 株式を3年以内に譲渡した場合
● 経済産業省大臣の証明が取消された場合
● 投資事業有限責任組合等の出資額割合を変更した場合(ファンド経由で投資するケース)
● 配当を受けた場合
● 投資簿価を減額した場合 等
これに対し、M&A型においては5年以内に成長要件を達成できなかった場合、5年経過後に所得控除された25%を益金算入します。
更に成長要件を達成した場合でも、5年経過していても売却や解散した時点でやはり益金算入します。
5年以内に成長要件を満たし、その後も50%超保有し続けない限りいずれ節税メリットはなくなると言えます。
なお、成長要件は5年内に売上1.7倍かつ33億円以上、研究開発費1.9倍以上等いくつかの類型があります。
本制度の他に株式投資を支援する税制として、株式取得額の70%を損金算入できる経営資源集約化税制(上限額10億円)があります。
いずれの制度も、株式取得の期限は2024年3月31日までとされています。