投資事業有限責任組合の経産省モデル契約が新たに公表

投資事業有限責任組合のモデル契約(令和7年版)が経産省から公表されました。
様々な類型のファンドを想定した汎用的な構成となり、また近年の法改正や税制動向にも対応しています。

より汎用的な構成に、外国投資家の参加も想定

  想定利用者 今後の位置づけ
平成22年版 ファンド類型を特定せず 令和7年版に引き継がれる
平成30年版 ベンチャー・キャピタル(VC) VC向けとして今後も活用
令和7年版 PEファンド含む汎用型
外国投資家も想定
平成22年版の後継

令和7年度版のモデル契約は5分冊構成で、英文版やその解説も充実しています。
また、外国LP条項として、PE課税特例や源泉徴収、FATCA/CRSに関する対応方針も記載されています。

LPS法改正やキャリード・インタレストにも対応

条文の構造に関しても、種々の変更や改正対応がなされています。

変更点 内容
LPS法改正の反映 暗号資産、合同会社持分、公正価値評価監査の意見範囲海外投資比率の見直し
GPの支配権変更対応 GPの支配権変更時に投資期間中断・早期終了等を可能とする規定を整備
借入・担保条項 キャピタルコール権や組合財産を担保とする借入
共同投資ファンド 1件あたりの投資上限額を超える投資機会が生じた場合、共同投資ファンドを別途組成
四半期報告 従来は半期報告としていた財務情報の開示の想定頻度を四半期へ
キャリード・インタレスト GPが取得するキャリード・インタレストの設計を選択肢として想定
評価準則や指標の削除 従来は別紙として記載していた投資評価準則や累積IRRを削除

キャリード・インタレスト(持分に基づく分配)については、2021年の国税庁情報を踏まえ、経済合理性を満たすための要件にも言及しています。
①組合契約に定めている分配条件が恣意的でないこと
②組合契約の内容が一般的な商慣行に基づいていること
③ファンドマネージャー(役職員)が投資組合事業に貢献していること

(参考)
(2021/4/1) 国税庁「キャリード・インタレストを受け取る場合の所得税基本通達36・37共-19の適用について」

なお、従来は契約書別紙として設けられていた投資評価準則や累積内部収益率(IRR)が削除されました。
LPS会計規則の改正により、公正価値(時価)評価が原則的な評価方法とされたことに伴い、評価準則を別紙記載する必要性が低下し、契約書本文の会計条項で柔軟な選択肢が示されています。
また、指標の算定方法は、画一的にIRRを用いるのではなく、各ファンドで個別に定めるべき事項とされたものと考えられます。

投資事業有限責任組合の組成にあたって、近年の動向を反映した設計にしたい場合には特に有用なモデル契約といえるでしょう。

2025年投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱いの改正

「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」が今年も改正されました。
LPS会計規則がLPS法施行規則に統合され、これに対応して用語や条文の修正が行われています。

LPS法施行規則の改正によりLPS会計規則が統合

2025年2月25日に「投資事業有限責任組合契約に関する法律施行規則」が改正されました。
「投資事業有限責任組合会計規則」の内容が編入されています。

これに合わせて、公認会計士協会は2025年5月22日、「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」の改正を公表しました。
会計処理や監査手続に関する変更はありませんが、用語や参照条文の修正対応が図られています。

具体的な変更点は下表の通りです。

  改正前 改正後
P/L 当期損益 当期損益
注記「1.財務諸表等作成の基礎」 投資事業有限責任組合会計規則 投資事業有限責任組合契約に関する法律施行規則
附属明細書 投資先会社等の状況 投資先事業者の状況

監査報告書においても、LPS会計規則からLPS法施行規則へ用語の修正が行われます。

今回の改正は、2025年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

投資事業有限責任組合のLLPによるGP登記が可能に

投資事業有限責任組合(LPS)は、無限責任組合員(GP)と有限責任組合員(LP)から構成されます。
無限責任組合員はファンドの運営を行い、有限責任組合員は投資家として資金を拠出します。
この無限責任組合員になれるのは個人や法人だけではなく、有限責任事業組合(LLP)も可能です。
2023年6月に登記規則が改正され、投資事業有限責任組合の無限責任組合員として、有限責任事業組合を登記することができるようになりました。

LPSのGPとしてLLPを登記することが可能に

投資事業有限責任組合の設立にあたって、有限責任事業組合を組成して無限責任組合員とするケースがあります。
例えば、ファンドを運営する個人や法人が無限責任を負うのを回避するといった理由があります。

この場合であっても、従前は無限責任組合員として登記できるのは個人または法人のみでした。
よって、有限責任事業組合の組合員全員、またはその代表者を無限責任組合員として登記することが行われてました。

今回の登記規則の改正により、有限責任事業組合自身が無限責任組合員として登記できるようになります。
また、既に設立されている投資事業有限責任組合についても、更正の申請により上記扱いが認められるとされています。

投資事業有限責任組合のLLPによるGP登記が可能に

投資事業有限責任組合の柔軟な設計に、登記実務も対応されるようになったのは望ましいことと考えます。

投資事業有限責任組合の海外投資制限が緩和

2024年は投資事業有限責任組合(LPS)に関する法律や会計規則の改正が相次ぎました。
会計面では、公正価値評価が原則とされた他、監査意見の範囲に係る修正もありました。

更に運用面でも、海外投資規制が緩和されるなどの法改正が行われています。

実質支配する外国株式投資は制限対象外に

LPSには、外国法人の株式等への出資割合を50%未満としなければならいない制限があります。
日本の経済活力の向上が元々の制度趣旨として掲げられているためです。
この出資割合は、海外投資額が総組合員の出資履行金額総額に占める割合とされています。

2021年の法改正により、産業競争力強化法に基づく海外投資規制の特例が設けられました。
LPSが経済産業大臣の認定を受けて行う一定の海外投資は、50%比率規制の適用が除外されます。

更に2024年の改正により、国内事業者が経営を実質的に支配し、または経営に重要な影響を及ぼす外国法人も、50%比率規制の対象となる外国法人の範囲から除外されました。
LPSを活用した海外事業投資の促進を図ったものです。

関連コラム:
(2024/9/30) 投資事業有限責任組合は公正価値評価が原則に
(2024/10/31) 2024年投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱いの改正

暗号資産や合同会社の持分もLPSの投資対象に

その他の改正事項として、LPSの投資対象が拡大しました。
暗号資産及び合同会社の出資持分が対象に追加され、スタートアップへの投資環境が改善されました

なお、LPSは法人格を有しないため、合同会社の社員にはなれません。
よって、代わりに無限責任組合員が合同会社の定款や登記簿謄本に記載されることになります。

今回の法改正により、LPSによる事業展開の幅が広がることが期待されます。

2024年投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱いの改正

「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」が今年に入って2回改正されています。
LPS会計規則やLPS法の改正があったため、これらに対応しました。

LPS会計規則の改正により公正価値評価が原則に

2023年12月にLPSの会計規則が改正され、非上場株式を原則として公正価値評価することが定められました。

関連コラム:
(2024/9/30) 投資事業有限責任組合は公正価値評価が原則に

これと整合させるべく、公認会計士協会は2024年6月21日、「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」の改正を公表しました。

主な変更点は以下の通りです。
● 時価の定義を公正価値と明確化
● IPEVガイドライン採用時の公正価値の見積りに係る監査上の留意事項を新設
(改正前は付録8に記載)
● 附属明細書「1.投資の明細」、「3.組合員の持分に関する明細」における期末時価を削除

2024年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

LPS法の改正により監査意見の範囲等が修正

LPS法(投資事業有限責任組合契約に関する法律)も2024年6月に改正がありました。
これに伴い2024年9月17日、今年2回目となる「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」の改正が公表されました。

今回の変更点は主に以下の通りです。
● 監査意見及びその他の記載内容の範囲に関する修正
● 業務報告書に記載された重要な後発事象を財務諸表においても注記
(業務報告書が監査意見の対象外になったため)
● 中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則の廃止に伴う修正

1点目について、業務報告書が監査意見の対象外とされ、その他の記載内容に含まれることとされました。
会社法において事業報告書が監査意見の対象外である点と整合的になりました。

  改正前 改正後
B/S及びP/L 監査対象 同左
重要な会計方針
及びその他の注記
監査対象 同左
業務報告書 監査対象 その他の記載内容
(意見範囲の対象外)
附属明細書 会計に関する部分:監査対象
会計に関する部分以外:その他の記載内容
B/S及びP/Lに係るもの:監査対象
B/S及びP/Lに係るもの以外:その他の記載内容

こちらに関しては、2024年9月2日以後開始する事業年度から適用されます。

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