ファンドの中でも匿名組合は、組合員への配当によりパススルー課税と同等の効果を得られるとしてよく活用されるスキームです。
今日は、その計算を一部認めないとされた裁決事例(国税不服審判所・13年3月)をご紹介します。
本件匿名組合の概要
この事例では、07年1月に契約締結したP匿名組合と、その前年の06年12月に終了したK匿名組合が登場します。
本件を単純化すれば、営業者は、K匿名組合において生じた事業損失及び管理費用を、P匿名組合の利益から控除しました。
一方、裁決ではこれら2つの組合は別個のものであるとされ、上記損失及び管理費用をP匿名組合の利益から控除することは認められませんでした。
匿名組合の契約内容もポイントに
営業者は、P匿名組合はK匿名組合の自動更新条項に従って更新されたものであり、2つの組合は実質的に同一と主張しました。
しかし、P匿名組合とK匿名組合とは契約内容(事業内容や解約条項)が同一とはいえず、またK匿名組合の運用報告書には出資金の返還額に関する記載等もあり、これら2つの組合は形式的にも実質的にも別個のものと判断されました。
更に、P匿名組合の管理費用についても、P匿名組合の利益から控除することはできないとされており、契約書における利益計算上、当該管理費用を控除する旨の規定がないことが指摘されています。
匿名組合における利益計算の適正性は、このように契約内容や運用報告等も材料としながら形式・実態の両面から判断されています。
ファンド設立や清算の際には、こういった点も慎重に検討する必要があると考えます。
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