2014年ファンド・投資環境の変化

今年2014年は、大きく見れば円安・株高という流れの中で、ファンドや投資環境としては追い風であった印象を受けます。
しかし、適格機関投資家等特例業務の見直しは来年早々にも動きがあると注目されており、また平成27年度税制改正への対応と年明けは慌ただしくなりそうです。

適格機関投資家等特例業務の見直しは年明けに持ち越しか

今年1年の間でファンド・投資環境に影響を与えた出来事としては、下表の通りになります。
2014年ファンド環境

ファンド設立や運用に大きな影響を及ぼす適格機関投資家等特例業務の見直し案は、特にベンチャー業界からの反発が強く、結局施行が一時見送られました。
しかし、大枠は原案のまま年明けに決まる可能性もあるとの話も聞こえており、何らかの対応は迫られることになりそうです。

また、昨日発表された平成27年度 税制改正大綱にも注意したいと思います。
NISAの非課税枠拡大、ジュニアNISAの創設
受取配当の益金不算入制度の見直し
 即時償却の1年延長、但し太陽光発電設備は除外(2015年3月末で終了) 

来年もファンド監査や設立で皆様をサポートしたいと思います。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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ファンドの不動産流動化指針を改正へ

先日公認会計士協会より、「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」及びそのQ&Aの改正案が公表されました。

● 不動産の売却処理に係るリスク割合について、経過措置(10%基準)の削除
● 不動産の流動化取引の更新時の適用及び会計処理の明確化
● その他字句・体裁等の修正

不動産流動化の5%ルールは健在

上記1点目について、不動産をファンド(特別目的会社)に譲渡する際、リスク及び経済価値のほとんどがファンドに移転すれば、譲渡人は当該不動産を売却したものとして処理することができます。
すなわち、不動産を貸借対照表から切離し、売却損益を計上することができるため、この「リスク及び経済価値のほとんどが移転」したかどうかが重要なポイントになります。

そして、譲渡人は(リスク負担額 ÷ 不動産時価)がおおむね5%以内であれば、リスク等がほとんど移転したとして売却処理が可能となります。
例えば譲渡人が不動産引渡後もファンドに出資する場合、その投資額が時価の5%を超えていれば売却したことにはならず、また買戻し義務を負っているような場合も同様です。
不動産流動化の5%ルール
不動産市況は好転の兆しを見せ、ファンド設立・組成も増え始めてきました。
会計基準や指針についても、今一度確認・検討していきたいと考えます。

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(2014/7/13) NISAの注意点
(2014/6/30) 2014年上半期ファンド・投資環境の変化
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(2014/4/13) エンジェル税制見直し、個人のベンチャー投資促進へ

NISAの注意点

最近よく話題に挙がるNISA(少額投資非課税制度)。
ファンドや投資に関係する方以外の方達からも「実際投資としてどうなんでしょう?」と聞かれることが多くなりました。
NISA

損益通算や5年後に注意

「年間100万円の投資額の範囲内で投資後5年間は売却益や配当金が非課税」というメリットは知られています。
ではいざ投資するにあたり注意する点として、以下が挙げられます(本コラム掲載時点)。

● NISA口座で生じた売買損失は、他の口座との損益通算や繰越が不可
● 5年後の満期時点で生じている含み損失は実質切捨て(翌年に100万円枠があれば引継ぎ可)
● 分配再投資で100万円を超えたら課税
● 投資対象は国内外株式・ETF・REIT等、公社債や公社債投信は対象外
● 口座開設する金融機関が銀行等の場合、投信のみで株式を取扱っていない
● 配当金の受取方法は株式数比例配分方式を選択する

1点目と2点目は思わぬ落とし穴となりがちです。
また最後の配当について、配当金領収証方式や登録配当金受領口座方式を選んだ場合は非課税とならず20.315%が課税されるので、申込み時に注意が必要です。

ファンド投資の補完となるか

適格機関投資家等特例業務の見直しにより、今後は小規模の個人投資家にとってファンドへ投資することが難しくなりそうです。
NISAについては現行の投資枠100万円の拡大や非課税期間5年の延長が検討されており、ファンド投資の補完という意味も含め、個人投資の活発化へ繋がることを希望します。

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2014年上半期ファンド・投資環境の変化

ファンドや投資を取巻く環境は、今年に入って有利な方向にも不利な方向にも大きく動いているように思われます。
前回のコラムでは、規制強化案が施行された場合、特に個人投資家層に向けたファンド設立や運用が難しくなることを取上げました。
この点も含め、この上半期の変化について法令や税制を中心に整理してみます。

適格機関投資家等特例業務の見直しは大きな痛手か

2014年上半期ファンド環境

投資促進税制の創設エンジェル税制の拡充案といった、ベンチャーファンドへの投資を税制面からサポートしようとする動きが見られます。
またファンドとは直接関係ありませんが、NISAの創設も大きな話題となりました。

しかし、適格機関投資家等特例業務の見直し案が8月から適用された場合、投資資産が1億円未満の個人投資家にとってファンドへの投資のハードルは相当上がることになると考えられます。
ようやく経済環境が好転の兆しを見せ投資への機運も高まってきている中で、個人や法人の投資意欲が減退しないよう私たちもファンド設立、監査、会計といった面からより一層サポートしてゆきたいと思います。

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ファンドのトレンド

私が監査法人に所属していた頃、特に2005年以降ベンチャーキャピタルの監査を担当することがよくありました。
ファンドを設立して投資家からお金を募り、上場(IPO)を目指す未公開会社の株式に投資するというもので、主に投資事業有限責任組合(LPS)や任意組合が組成されていました。

ライブドアを始めとして若手経営者が会社を次々と上場させ、ファンドもそういった会社の成長性に投資するための器として盛んに組成されていました。
NHKの「ハゲタカ」というファンドを舞台にしたドラマが人気となり、また会計監査がテーマのドラマ「監査法人」が放映されたのもこの頃だったように思います。

同じ時期、不動産ファンドが活況でした。
地価の上昇に乗ってオフィス、商業施設、レジデンス(住宅)の開発が進み、資金調達の手段として活用されたのが特別目的会社(SPC)でした。
ここでは、金融機関からノンリコース・ローンを調達するため、匿名組合ファンド(TK-GK)特定目的会社(TMK)といった法人格を有するスキームが次々に設立されました。

これらベンチャーキャピタルファンドや不動産SPCはリーマンショック、その後の金融危機により勢いを潜め、替わりに事業再生ファンドが積極的に登場するようになりました。
その特徴としては、単なる資金を調達する器に留まらず、人材(経営陣や監査役)を参画させるケース、政府や自治体がスポンサーとして主導するケース等、案件や目的に応じて多様かつ柔軟なファンド設計が行われていた点が挙げられます。

そして今、株高・地価回復・円安というトレンドの中で、IPOや不動産市場が活気づいてきています。
かつてのように不動産SPCが盛り返すのか、あるいは全く新しいスキームが登場するのか、ファンド監査も変わるのか・・・目が離せないこの頃です。

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