2022年ファンド・投資税制② ~配当が総合課税となる大口株主の範囲拡大~

個人が上場会社から受取る配当金は通常20.315%の源泉分離課税ですが、持株割合3%以上の大口株主の場合は総合課税となります。
今回の税制改正で、個人とその同族会社の持株割合を合算して3%の判定を行うこととなりました。

個人と同族会社の持株割合が合計3%以上で上場株の配当が総合課税に

持株割合3%未満の上場会社から個人株主が配当を受取る場合、20.315%の源泉分離課税となります。
ここで、持株割合が単独で3%未満の個人株主が、その資産管理会社等を通じて3%以上出資しているケースが散見されました。

個人と同族会社の持株割合が合計3%以上で上場株の配当が総合課税に

このような場合にまで分離課税を認めるのは適当ではないため、個人とその個人が50%超を保有する同族会社の持株数を合算して3%の判定を行うこととされました。
これにより、上図のケースでは個人株主が受取る配当金は総合課税(税率は最大55%)となり、上場株式の譲渡損失との通算も認められなくなります。

本改正は、2023年10月1日以後に支払われる上場株式の配当について適用されます。

またこれに関連して、上場会社は持株割合1%以上となる個人株主の情報を、配当金の支払確定日から1ヶ月以内に税務署長に提出することが義務がづけられます。

出資比率1/3超~100%未満の配当は、最大で4%課税

法人が受取る配当金に係る2つの改正は、予定通り2022年4月1日から適用されます。
関連コラム:
(2020/3/31)  2020年ファンド・投資税制② ~受取配当の益金不算入~

出資比率が1/3超~100%未満の投資先(関連法人株式等)からの配当について、以下のいずれか少ない金額に対して課税されることとなりました。
●配当金額の4%
●支払利子の10%
これにより、関連法人株式等からの配当に対して最大4%が課税される点に留意が必要です。

また、100%支配関係にあるグループ会社全体で出資比率を判定できるようになりました。
よって、益金不算入となる割合が上がる可能性があります。

なお、100%子会社株式及び関連法人株式等に係る配当について、2023年10月1日以後は源泉徴収が不要となります。

2021年ファンド・投資税制③ ~社債利子の総合課税対象範囲が拡大~

同族会社の経営者等による、社債利子を利用した節税策への規制が強化されます。
法人を経由させて受取った社債利子等についても、総合課税の対象となりました。

同族会社を間接的に保有する場合でも社債利子は総合課税に

従来、社債の利子は分離課税(所得税率15.315%+住民税率5%)でした。
このことを利用して、個人が経営する同族会社に社債を発行させるスキームが流行りました。
そして、給与の代わりに社債の利子を受取っていました。
役員報酬(給与)であれば総合課税の対象となり、累進税率(所得税率5~45%+住民税率5%)が適用されるため、これを回避する目的です。

そこで2013年税制改正では、同族会社の株主が受ける一定の社債利子については、総合課税の対象とされました。
しかし、この規制の対象となったのは、同族会社の直接株主のみでした。
すなわち、法人A社の子会社B社が発行する社債を、当該法人A社の個人株主が引受けた場合、社債利子は依然として分離課税のままでした。

よって今回の改正では、間接的に同族会社を保有するケースまで総合課税の対象範囲が拡大されました。
具体的には、同族会社の判定の基礎となる法人株主と特殊関係を有する個人及びその親族等に支払われる社債利子も総合課税となります。

特殊関係には、以下が該当します。
●株式の50%超を保有する場合
●一定の議決権の50%超を有している場合
●合名会社・合資会社・合同会社の社員等の過半数を占めている場合

過去に発行された社債の利子等も対象に

本改正は、2021年4月1日以後に支払われる社債利子及び償還差益が対象となります。
過去既に発行された社債の利子についても、総合課税となりますので注意が必要です。

特定目的会社、投資法人は2020年から電子申告が義務化

不動産ファンドとして組成される特定目的会社と投資法人。
2020年4月1日以降に開始する事業年度から電子申告が義務化されました。

特定目的会社、投資法人は小規模でも電子申告が義務化

電子申告の義務化の対象となる法人は下表の通りです。

2020年から電子申告が義務づけられる法人
資本金1億円超の大法人
相互会社
特定目的会社
投資法人
国及び地方公共団体

一般の事業会社であれば、資本金1億円超の大法人のみが対象となります。
しかし特定目的会社、投資法人、相互会社等については規模に関係なく電子申告が義務づけられました。

2020年4月以降にファンドを設立する際には、「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を1ヶ月以内に提出する必要があります。
既存の特定目的会社や投資法人についても、既に電子申告している法人含め届出書の提出が必要とありますので要注意です。

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2018年ファンド税制 ~つみたてNISA開始、ベンチャー投資促進税制延長~

株高の追い風もあり、ベンチャー投資ファンドの設立に関するご相談が増えています。
2018年税制改正においても、株式や投資信託への投資に関する項目が目立ちました

つみたてNISA開始、総額800万円まで非課税に

 2018年1月からつみたてNISAの運用が開始されます。
従来のNISA(一般NISA)に比べ年間の非課税投資枠は少ないものの、20年間と長期にわたって資産形成することが可能です。

  一般NISA ジュニアNISA

つみたてNISA
(積立NISA)

非課税投資枠
(投資上限額)
120万円/年 80万円/年 40万円/年
非課税期間 5年間 5年間 20年間
投資対象 上場株式・投資信託等 上場株式・投資信託等 一定の投資信託等に制限
投資手法 自由
(給与・賞与等から天引も可)
自由 定期・継続購入
or
給与・賞与等から天引

なお、「つみたて(積立)NISA」は「職場積立NISA」と混同しやすいので注意が必要です。
職場積立NISAは、職場で給与・賞与から天引された拠出金をNISA対象となる投資信託等に投資する仕組で、一般NISA口座またはつみたてNISA口座を利用することになります。
一般かつみたてかいずれの口座を利用するかによって、上表の通り投資上限額や期間が異なります。

その他の改正事項として、省エネ再エネ高度化投資促進税制の創設、ベンチャー投資促進税制の適用期限延長(2019年3月31日まで)等があります。
上場銘柄、ベンチャー企業、再生可能エネルギー等多様な投資を後押しする税制改正はファンドにとっても歓迎です。

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ビットコインの利益は雑所得、消費税は非課税に

投資として注目されているビットコイン、弊事務所にもファンド設立の相談が稀にあります。
これら仮想通貨に係る税務の取扱い等が明らかになってきました。

ビットコインの利益は原則として雑所得に

国税庁は、「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」を公表しました。
「ビットコインを使用することにより生じる損益は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。」

原則として総合所得の雑所得となることから、株式やFXの損益との通算はできません。

また、これら仮想通貨は改正資金決済法において「支払の手段」と定義されたことに伴い、消費税法上は非課税取引に該当します。

なお、仮装通貨交換業者は、利用者財産の分別管理について、年に1度以上の公認会計士または監査法人による監査(合意された手続)が義務づけられています。

所得税 雑所得
(または事業所得)
消費税 非課税
利用者保護 交換業者に対する監査
(合意された手続)

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