上場株式等、年末ポジション整理や含み損益銘柄の決済は早めに

まもなく年末を迎え、今年度の投資を清算する方も多いかと思います。
今回は代表的な投資である上場株式等について、税務上の注意点を取上げます。

特定口座の場合、ポジション整理は余裕をもって数日前に

個人投資家が今年の運用成績を見ながらポジションを整理して含み損 / 益銘柄を決済したい場合、年末ギリギリではなく早めの実行が大切です。
約定日から実際の決済日(受渡日)までには3営業日程度のタイムラグがあります。

ここで所得税法では、上場株式等の売買損益を計上するのは原則約定日ではなく「株式等の引渡しがあった日」とされます(所措法37の10-1)。
従って約定日が12月末、決済日(受渡日)が翌年1月となった場合、12月中にポジションを整理して損益を調整したつもりでも翌年に取引したことになるため、ポジション整理は余裕をもって行うのがよいでしょう。

但し、特定口座ではなく一般口座であれば、確定申告において約定日ベースで売買損益を計算することも可能です。
なお、法人の場合は約定日により計上します(法基通2-1-22,23)。

個人 特定口座 決済日(受渡日) →余裕をもって3日前には取引実行
一般口座 決済日(受渡日) / 約定日
法人 約定日

 

クロス取引は個人投資家には有効、法人は売買目的有価証券のみ可

ポジション整理に関連して、所有している株式等を一度売却し、直ちに同一銘柄の株式等を購入することをクロス取引といいます。
例えば現時点で多額の利益(実現利益)を上げている投資家が含み損銘柄を持っている場合、当該銘柄を売却してすぐ買戻すことが考えられます。
これによりポジションは変わらず、含み損の実現によって利益を圧縮して税金を減らすことができます。
反対に、実現(決済)損益がマイナスの投資家が含み益銘柄を一旦売却し、買戻すことで損失を減らす場合もあります。
クロス取引のイメージ

このクロス取引の注意点として、個人投資家には有効ですが、法人の場合は売買目的有価証券を除いて認められません。
すなわち、法人が売買目的以外の有価証券についてクロス取引を行った場合、その売却は「なかったもの」とされます(法基通2-1-23の4)。
よって、ここで実現させた含み損益は法人税法上は認識することができないため注意が必要です。

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