投資事業有限責任組合の源泉徴収①

ファンドでは、源泉徴収が資金繰りや投資家の利回りを左右することがあり、これをどのように処理するかが重要なポイントになります。
今回は、投資事業有限責任組合の源泉徴収について考えたいと思います。

投資事業有限責任組合の利益分配に対する源泉徴収は原則不要

投資事業有限責任組合の場合、個々の組合員が損益の帰属主体であり、組合はその集合と位置付けられます。
よって、「誰かから誰かへ分配を行う」という考え方ではないため、原則として組合利益の分配金に対して源泉徴収はありません。

但し、組合員が非居住者等(非居住者または外国法人)で恒久的施設を有する場合、20%の源泉徴収が必要になります。
源泉徴収の時期は金銭を交付した日であり、金銭の交付がない場合には期末から2ヶ月となります。
この場合であっても、一定の要件を充たした組合員は、所轄税務署長より免除証明書の交付を受け、それを提示することで源泉徴収は免除されます。

なお、民法上の任意組合や有限責任組合(LLP)についても、基本的に投資事業有限責任組合と同様と考えますが、匿名組合の源泉徴収については取扱が異なるため、この点はまた別の機会に取上げたいと思います。

関連コラム:
(2014/3/16) 投資事業有限責任組合の源泉徴収②
(2014/3/23) 匿名組合の源泉徴収

匿名組合の利益計算が否認された事例

ファンドの中でも匿名組合は、組合員への配当によりパススルー課税と同等の効果を得られるとしてよく活用されるスキームです。
今日は、その計算を一部認めないとされた裁決事例(国税不服審判所・13年3月)をご紹介します。

本件匿名組合の概要

この事例では、07年1月に契約締結したP匿名組合と、その前年の06年12月に終了したK匿名組合が登場します。
本件を単純化すれば、営業者は、K匿名組合において生じた事業損失及び管理費用を、P匿名組合の利益から控除しました。
一方、裁決ではこれら2つの組合は別個のものであるとされ、上記損失及び管理費用をP匿名組合の利益から控除することは認められませんでした。

匿名組合の事例

匿名組合の契約内容もポイントに

営業者は、P匿名組合はK匿名組合の自動更新条項に従って更新されたものであり、2つの組合は実質的に同一と主張しました。
しかし、P匿名組合とK匿名組合とは契約内容(事業内容や解約条項)が同一とはいえず、またK匿名組合の運用報告書には出資金の返還額に関する記載等もあり、これら2つの組合は形式的にも実質的にも別個のものと判断されました。
更に、P匿名組合の管理費用についても、P匿名組合の利益から控除することはできないとされており、契約書における利益計算上、当該管理費用を控除する旨の規定がないことが指摘されています。

匿名組合における利益計算の適正性は、このように契約内容や運用報告等も材料としながら形式・実態の両面から判断されています。
ファンド設立や清算の際には、こういった点も慎重に検討する必要があると考えます。

「ファンド設立」に関連するコラム:

(2014/2/2) ファンド設立における不動産取得税(5分の3控除)

ファンド監査に関するQ&Aの改正

ファンド監査に関してもう1件、日本公認会計士協会から「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」の改正も公表されました。

近年の会計基準改正にファンド監査指針も対応

近年、SPC・組合に関する会計基準について、多くの改正が行われました。
用語の定義から会計処理、開示方法まで見直し・新設が行われたことを受け、ファンド監査の指針もアップデートされたということです。

【主な会計基準等】
連結財務諸表に関する会計基準
一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針
特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針について のQ&A(不動産流動化実務指針Q&A)

特別目的会社の連結

SPCや組合の監査を行う上で、大きく影響を受けた会計処理の改正として記憶に残っているのは、特別目的会社の連結規定についてです。
出資者にとってSPCが連結対象か判断する際、連結除外推定(財務諸表等規則8条7項)が適用されなくなったため、出資者がSPCを新たに連結対象とするケースが生じました。

140223特別目的会社の連結

特別目的会社の連結については、現在もIFRSの支配力基準等を視野に入れ検討を重ねているとのことで、今後もファンド監査や会計基準の改正が予想されます。

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(2014/2/16) ファンド監査の意見表明に変更?
(2014/2/9) 投資事業有限責任組合の監査指針を改正

ファンド監査の意見表明に変更?

投資事業有限責任組合匿名組合といったファンド監査に一部変更が検討されています。
監査手続自体は従来通りリスク・アプローチに基づき実施するのですが、監査契約の締結・更新、そして監査意見の形成の際に、目的や位置付けを一層明確にするとの見込です。

財務報告を一般目的と特別目的に区分

日本公認会計士協会は現在、「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」(公開草案)について、2月17日まで意見を募集しています。

公開草案によれば、特別目的、すなわち特定の利用者のニーズを満たすよう作成された財務諸表については、従来の適正性に関する意見表明が馴染まないことが多いとあります。
このような場合には、準拠性(財務諸表の作成にあたり適用された会計基準に準拠して作成されているかどうか)について意見を表明することが適切ということです。

              一般目的                     特別目的         
利用者      広範囲の利用者          特定の利用者

監査意見    適正性(の場合が多い)      準拠性(の場合が多い)

具体的な     金融商品取引法           社債、借入、匿名組合等の契約
枠組例 (※)    会社法                 投資事業有限責任組合に関する法律                                        年金基金

※ 一般目的であっても適正性に関する意見表明に馴染まないケースもあり、この場合は準拠性に関する意見を表明することが考えられる

ファンド監査への影響

投資事業有限責任組合や匿名組合においては、特定の投資家や金融機関に対する財務報告がなされていることが多いと考えられます。
今後それらのファンド監査については、特別目的の財務諸表の監査を実施することになると思われます。
具体的には、監査報告書に作成目的や想定利用者、強調事項として「他の目的には適合しないことがある旨」等を記載した上で、準拠性について監査意見を表明することが想定されます。

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(2014/2/9) 投資事業有限責任組合の監査指針を改正

投資事業有限責任組合の監査指針を改正

ファンド監査が義務づけられている投資事業有限責任組合について、「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い(業種別委員会実務指針第38号)」の改正が公表されました。

投資事業有限責任組合監査の改正点

主な改正点として、付録1に「注記のひな型」が追加されました。
記載上の注意が新設されており、組合設立の際に決定した存続期限を延長する場合の情報開示等が盛込まれています。

その他、投資事業有限責任組合の投資対象が他のファンド持分等である場合、投資先のファンドについても監査上より慎重に検討しなければならないと記載されました(74項)。
無題2
投資事業有限責任組合(LPS)は、先日ベンチャー投資促進税制で取上げたばかりですが、今回はファンド監査の実務指針についても改正されました。
それだけ活用される機会が多くなり、適格機関投資家やファンドマネージャーからも注目されていることが考えられます。

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(2014/1/26) 投資事業有限責任組合を活用したベンチャー投資で8割が損金に

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