2026年ファンド・投資税制④  ~ミニマムタックス課税で最大35%に~

個人の富裕層の所得税負担率を是正するために導入されたミニマムタックス課税。
2026年税制改正により、適用範囲及び負担額が大幅に拡大されます。

株式や不動産等の分離課税でも最大税率35%に

高所得者であるほど実質的な所得税負担率が低くなる現象、これは俗に「1億円の壁」問題と言われます。
富裕層が、分離課税(20%程度)や申告不要制度の対象となる有価証券や不動産を多く保有することに起因して生じる事象です。

この対応策として、2023年税制改正によりミニマムタックス課税が導入されました。
基準所得金額が3.3億円を超える場合、その超過部分に対して所得税率が22.5%で計算されます。
基準所得金額には、申告不要とされる上場株式の配当や譲渡所得、分離課税となる不動産等の譲渡所得も含まれます。

今回の税制改正により、基準所得金額から控除する金額が3.3億円→1.65億円に引き下げられます。
更に、適用税率も22.5%→30%(住民税と合わせて35%)に引き上げられます。

  2024年以前 2025~2026年 2027年以降

譲渡所得税等の所得税率
(所得税+住民税)

15%
(20%)
15~22.5%
(20~27.5%)
15~30%
(20~35%)
追加課税がかかり始める
境目となる所得(※)
– 10.33億円 3.37億円

※ 総合課税の対象となる所得がなく、株式・不動産の譲渡や上場株式の配当に係る所得のみの場合

仮に分離課税所得のみの場合、税率が上がる境目となる所得は3.37億円と試算されます。
もっとも、3.37億円を超えればすぐ最高税率35%に達するわけではありません。

税率の上昇は以下のグラフのようなイメージです。

上記の改正は、2027年1月1日以後の所得税について適用されます。
よって、高額の自社株や不動産を譲渡する場合、実行が今年か来年以後かによって税負担が大きく異なる可能性があります。

2026年ファンド・投資税制③  ~LPSの外国員組合員の特例要件が緩和~

投資事業有限責任組合(LPS)に出資する外国員組合員へ分配する際、原則として20.42%の源泉税が課せられます。
一定の要件を見たす場合、当該分配所得を非課税とする特例があります。
2026年税制改正により、この特例の適用要件が大きく緩和されました。

ファンドに対する持分割合の上限を50%未満に引き上げ

海外投資家(非居住者・外国法人)が有限責任組合員(LP)として出資する場合、原則としてその外国組合員は日本にPE(恒久的施設)を有するものとされます。
これにより、ファンドから外国組合員への分配は、国内源泉所得として原則20.42%の源泉税が課税されます。

但し、外国組合員のファンドに対する持分割合が25%未満であること等の5つの要件を満たせば、上記のファンドに起因する所得を非課税とする特例がありました。
もっとも、その要件が厳格であるため、国内への投資の障壁となっているとの指摘が見られました。

そこで、2026年税制改正により、外国組合員に対する課税の特例の要件が大きく緩和されました。

  改正前 改正後
LPへの該当 有限責任組合員(LP)であること 同左
業務執行 業務執行を行わないこと 利益相反取引の承認等を業務執行行為から除外
持分割合 25%未満 一定の合議体を設置している場合に限り50%未満
GPとの関係 無限責任組合員(GP)と特殊関係にないこと 同左
他のPE帰属所得 他にPE帰属所得を有さないこと 廃止

具体的には、有限責任組合員等から構成される一定の合議体を設置している場合、持分割合要件を25%未満→50%未満に引上げられます。
他にも、業務執行要件の緩和や、他にPE帰属所得を有さないことの廃止も盛込まれました。

外国組合員の課税の特例(持分割合)

上記の改正は、2026年4月1日から施行されます。
なお、既存の投資事業有限責任組合であっても、LPS契約を変更して一定の合議体を設置すれば、外国LPについて持分50%未満の緩和要件を適用できると考えられます。

2026年ファンド・投資税制②  ~暗号資産が分離課税に~

暗号資産の分離課税がとうとう実現する見通しとなりました。
ビットコインやイーサリアムを売却した個人に課せられる所得税は、大幅に引き下げられることが期待されます。

特定暗号資産の譲渡所得は20%分離課税に

個人がビットコイン等を売却した場合、これまでは総合課税となり最大で55%(住民税含む)の所得税が課せられました。
今後は、金融商品取引業者登録簿に登録されている一定の暗号資産等(特定暗号資産)に係る譲渡所得は20%の分離課税となります。
また、特定暗号資産の譲渡損失は、最大3年の繰越も認められることとなりました。

  特定暗号資産(現物) その他
売却時 分離課税の譲渡所得

総合課税の譲渡所得
(50万円控除、長期1/2、他の所得との通算は適用外)

税率(所得税+住民税) 20.315% 15~55%
譲渡損失 3年繰越 繰越不可

消費税の取扱いも改正

所得税だけでなく消費税の取扱いも変わります。

  改正前 改正後
譲渡 課税関係 非課税(支払い手段に類するもの) 非課税(有価証券に類するもの)
課税売上割合 分子・分母ともに算入しない 対価の5%を分母に算入
貸付 課税 非課税

暗号資産は「有価証券に類するもの」として扱われるようになります。
これにより、譲渡に関しては課税売上割合の計算上、譲渡対価の5%相当額を分母に算入することとなりました。
また、貸付により得られる報酬についても、従前の課税取引から非課税取引へ変更されます。
消費税改正の対象は、特定暗号資産に限らずアルトコインやミームコイン等全ての暗号資産が含まれます。

以上の改正は、金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後に行う暗号資産の譲渡等から適用されます。

2026年ファンド・投資税制①  ~こどもNISAの新設~

2027年からこどもNISAが始まります。
18歳未満でも、つみたて投資枠で年間60万円まで投資運用が可能となります。

こどもNISAは年間投資枠60万円、最大600万円まで

2023年に終了したジュニアNISAに替わり、こどもNISA(未成年者特定累積投資勘定)が創設されました。
年間60万円の投資が可能で、非課税保有限度額は600万円です。

こどもNISAの位置づけ

※ こどもNISAの引出し制限

原則 18歳まで配当金や売却代金も含めて引出し不可
(売却や再投資は可能)
例外① 3月31日時点で12歳以降は、子の同意を得た場合に教育費または生活費のための払出しが可能
例外② 12歳前でも災害等一定の場合には、税務署長の確認を受ければ払出しが可能

制度設計は新NISAのつみたて投資枠とほぼ同様で、投資を取崩した分の枠は簿価残高方式で再利用できる点も同じです。
但し、原則として18歳になるまで引出しできない点には注意が必要です。
なお、18歳になれば、自動的に新NISAのつみたて投資枠へ移行します。

こどもNISAは2027年1月1日から開始します。

2025年ファンド・投資税制③  ~登録免許税、不動産取得税の軽減延長~

登録免許税及び不動産取得税に関する軽減措置が、2025年税制改正により延長されました。

不動産ファンドに係る登録免許税、不動産取得税に係る軽減措置が2年延長

【登録免許税】

  所有権移転
(通常税率 2.0%)
所有権保存
(通常税率 0.4%)
土地の売買 1.5%
 (2026年3月末まで)
0.4%
個人の住宅用家屋
(50㎡以上の新築または一定の中古)
0.3%
(2027年3月末まで)
0.15%
(2027年3月末まで)
特定目的会社、
投資信託、投資法人
1.3%
(2027年3月末まで)
0.4%
不動産特定共同事業法 1.3%
(2027年3月末まで)
0.3%
(2027年3月末まで)

【不動産取得税】

  土地(宅地) 住宅用家屋 住宅以外の家屋
【税率】 3.0%
(2027年3月末まで)
3.0%
(2027年3月末まで)
0.4%
【不動産取得税の計算( = 課税標準×上記税率)】
一般 不動産価格×1/2×税率
(2027年3月末まで)
不動産価格×税率
(※)
不動産価格×税率
特定目的会社、
投資信託、投資法人
不動産価格×2/5×税率
(2027年3月末まで)
不動産特定共同事業法 不動産価格×1/2×税率
(2027年3月末まで)
経営力向上計画の
認定を受けた取得
(事業譲受のみ)
不動産価格×5/6×税率
(2026年3月末まで)

※ 50㎡(新築賃貸マンションは40㎡)以上240㎡以下の新築または居住用中古家屋については、最大1,200万円の控除あり

登録免許税について、今回の税制改正により以下の軽減措置が延長されました。
● 特定目的会社、投資信託、投資法人等が取得する一定の不動産に係る所有権移転登記: 2.0% →1.3%
● 不動産特定共同事業事業法に基づき取得する一定の不動産に係る登記
 所有権移転登記: 2.0%→1.3%
 所有権保存登記: 0.4%→0.3%

また、不動産取得税に係る軽減措置について、以下の延長が行われました。
● 特定目的会社、投資信託、投資法人等: 5分の2に軽減(5分の3を控除)
● 不動産特定共同事業者: 2分の1に軽減

なお、不動産特定共同事業法に関する登録免許税の軽減措置について、不動産取得後に新築または増築等に着手するまでの期限に係る要件を、取得後2年以内→3年以内とする等の見直しも行われました。

適用の可否や軽減効果を検討するにあたり、新築・中古、用途、面積等の要件を細かく確認する必要があります。

土地売買時の所有権移転に係る登録免許税の軽減は、2026年3月末に期限を迎えます。
こちらの軽減措置も、再度延長されることが期待されます。

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