2016年ファンド税制 ~株式・社債の損益通算や消費税還付スキーム~

ファンド・投資環境は2016年早々、中国経済懸念や原油安といったトピックを受けて大きな変動に見舞われています。
一方、税制改正によって2016年以降ファンドや投資にどのような影響が発生するのか、整理しました。

上場株・公社債の損益通算は可能、非上場株との損益通算は不可能に

主な内容
株式、社債 上場株式等と特定公社債(国債、上場公社債等)の損益通算が可能に
× 上場株式等と非上場株式等の損益通算が不可能に
NISA ジュニアNISA(未成年者口座で年間80万円まで非課税)の運用開始
不動産ファンド × 免税・簡易課税の要件が厳しくなり、消費税の還付が一層困難に
太陽光ファンド × 生産性向上設備投資促進税制は50%償却or4%税額控除(2016/4~2017/3月)

従来は株式、社債等の投資商品ごとに損益通算の取扱いが大きく異なっていました。
2016年以降は金融所得課税の一体化により、上場資産と非上場の資産に区分されます。
よって、例えば上場株式に係る譲渡損益や配当と、上場公社債に係る譲渡損益や利子との損益通算が可能になります。
一方、これまで可能であった上場株式と非上場株式との損益通算が不可能になります。

この他、1,000万円以上の高額資産を購入した場合、簡易課税や免税制度の適用が大きく制限されることになりました。
これにより、不動産ファンド等でマンションを購入して消費税の還付を受けるスキームは、ほとんどのケースでメリットがなくなります。

これらの改正点を全体的な視点で見ると、上場あるいは広く流通している投資商品を推奨し、プライベートや少人数で運用している資産を厳しく制限する意向を感じます。
投資の多様性より安全性を優先したいようではありますが、最終的には投資家自身がそれぞれリスクとリターンを判断することが何より重要と考えます。

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(2015/1/24) 2015年ファンドを取巻く税制①~税制改正のプラス項目~

上場株式等、年末ポジション整理や含み損益銘柄の決済は早めに

まもなく年末を迎え、今年度の投資を清算する方も多いかと思います。
今回は代表的な投資である上場株式等について、税務上の注意点を取上げます。

特定口座の場合、ポジション整理は余裕をもって数日前に

個人投資家が今年の運用成績を見ながらポジションを整理して含み損 / 益銘柄を決済したい場合、年末ギリギリではなく早めの実行が大切です。
約定日から実際の決済日(受渡日)までには3営業日程度のタイムラグがあります。

ここで所得税法では、上場株式等の売買損益を計上するのは原則約定日ではなく「株式等の引渡しがあった日」とされます(所措法37の10-1)。
従って約定日が12月末、決済日(受渡日)が翌年1月となった場合、12月中にポジションを整理して損益を調整したつもりでも翌年に取引したことになるため、ポジション整理は余裕をもって行うのがよいでしょう。

但し、特定口座ではなく一般口座であれば、確定申告において約定日ベースで売買損益を計算することも可能です。
なお、法人の場合は約定日により計上します(法基通2-1-22,23)。

個人 特定口座 決済日(受渡日) →余裕をもって3日前には取引実行
一般口座 決済日(受渡日) / 約定日
法人 約定日

 

クロス取引は個人投資家には有効、法人は売買目的有価証券のみ可

ポジション整理に関連して、所有している株式等を一度売却し、直ちに同一銘柄の株式等を購入することをクロス取引といいます。
例えば現時点で多額の利益(実現利益)を上げている投資家が含み損銘柄を持っている場合、当該銘柄を売却してすぐ買戻すことが考えられます。
これによりポジションは変わらず、含み損の実現によって利益を圧縮して税金を減らすことができます。
反対に、実現(決済)損益がマイナスの投資家が含み益銘柄を一旦売却し、買戻すことで損失を減らす場合もあります。
クロス取引のイメージ

このクロス取引の注意点として、個人投資家には有効ですが、法人の場合は売買目的有価証券を除いて認められません。
すなわち、法人が売買目的以外の有価証券についてクロス取引を行った場合、その売却は「なかったもの」とされます(法基通2-1-23の4)。
よって、ここで実現させた含み損益は法人税法上は認識することができないため注意が必要です。

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匿名組合出資や非上場株式も対象、1億円以上の国外転出時課税制度

1億円以上の有価証券等を有する居住者が海外へ転居する場合等に含み益に課税される制度(国外転出時課税)が始まります。
適用開始が2015年7月1日と目前ですが、どういうケースが対象か細かい留意点がたくさんあります。

匿名組合出資や非上場株式も対象、1億円以上の国外転出時課税制度

① 非上場株や匿名組合出資も含め有価証券等1億円以上

本制度によって課税される対象は、主に以下の通りです。
● 株式(非上場株式、外国株式も含む)、国債、投資信託
● 匿名組合出資
● ストックオプション
● 未決済のデリバティブ

基準となる1億円は時価評価額のため、株高・円安時においては上場株や外貨建資産により対象となる可能性が高まります。
また、非上場株式であれば会社の規模等に応じて類似業種比準価額方式や純資産価額方式等により評価し、匿名組合出資であれば匿名組合契約が終了したとする場合の分配清算金相当額により評価します。

② 国外転出の前10年以内に日本に住んでいた期間の合計が5年超

就業ビザによる滞在であれば、その期間は国内居住期間から除かれます。
よって、転勤等で日本に滞在する外国人駐在員(エキスパット)が帰国する場合には、本制度の対象とならないことが多いと思われます。

③ 1年以上の海外転勤者、非居住者への贈与・相続等も対象

国外移住だけでなく1年以上海外へ転勤する場合、居住者が非居住者へ有価証券等を贈与する場合等も対象となります。

なお、本制度では納税猶予や、5年以内に帰国した場合における課税の取消しといった配慮措置が設けられています。
但し、この帰国後の課税の取消しについて、帰国まで引続き所有している有価証券等に限る、帰国後4ヶ月以内に更正の請求が必要等の注意点があります。

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2015年ファンドを取巻く税制③~不動産取得税、登録免許税の軽減~

今回もファンド・投資環境に様々な影響を与えた税制改正。
その他細かい改正項目も追っていきたいと思います。

不動産取得税、登録免許税の軽減措置を延長

特定目的会社、投資信託、投資法人(Jリート)等が物件を取得する際に負担する不動産取得税について、5分の3相当を控除できる特例が2年延長され、2017年3月末までとなりました

不動産特定共同事業法に基づき取得した新築家屋等についても、不動産取得税の2分の1軽減措置が2017年3月末まで延長されました。

また、登録免許税の軽減措置も2017年3月末まで延長されています。
● 所有権移転登記:通常1000分の20 →1000分の13
● 保存登記(不動産特定共同事業法のみ):通常1000分の4 → 1000分の3

なお、軽減措置の対象となる不動産について、従来除かれていた倉庫等の物流施設が加えられました。

ファンドの不動産取得税、登録免許税の軽減措置
ファンド設立の際にはこうした税金コストは無視できません。
軽減措置の延長や倉庫等の追加は、今後のファンドにとってうれしいサポートになります。

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2015年ファンドを取巻く税制②~税制改正のマイナス項目~

ファンド・投資環境に追い風となりそうな税制改正項目として、前回はジュニアNISA等を取上げました。今回は、反対に負担増となりそうな項目を見ていきます。

受取配当への課税強化、5%以下と25~33.3%の負担増

受取配当金は出資比率によって課税される割合が異なります。
この受取配当の益金不算入の割合について、出資比率の区分が見直されました。

現行  平成27年度改正
 出資比率 課税割合 負債利子控除  出資比率  課税割合  負債利子控除 
 100%  0%  無  100%  0%  無
 25%~100%  0%  有  33.3%~100%  0%  有
25%未満  50%  有 5%~33.3%  50%  無
5%以下  80%  無

出資比率が5%以下の場合、受取配当金額の80%に対して課税されます。
また、25%~33.3%の場合も、従来非課税であったのが50%課税されるため負担増となります。
この他、証券投資信託の収益分配額が全額課税になる等の改正が行われました。

2015年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となります。

国外移住、海外転勤者の株式等含み益にも課税

1億円以上の有価証券等を有する居住者が国外移住や1年以上の海外転勤となった場合、有価証券等を譲渡したとみなして所得税が課税されることとなりました。
非上場株式やストックオプション、匿名組合への出資持分等も対象に含まれます。

本制度は、キャピタルゲインが非課税である国に出国して売却する租税回避行為を防止することが趣旨です。
ただし、未実現の利益(及び損失)に対する課税であることに配慮し、一定の措置が設けられています。
具体的には、納税猶予制度や、5年以内に帰国した場合は課税の取消しが可能とされています。

本制度は2015年7月1日以後の出国者への適用が予定されています。

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