2020年ファンド・投資環境の変化

2020年のファンド・投資環境は、新型コロナウィルス感染症により日常生活や健康、業績等への懸念が強まる一方、株価や市況は極めて好調という特殊な年となりました。
世界的な金融緩和は当面続く見通しで、ファンドを組成したいというご相談も多く受けました。
他方、過度な節税に対して「待った」をかける税制改正が行われました。

賃貸住宅や海外不動産の節税策に歯止め

2020年改正項目 影響 内容
オープンイノベーション促進税制の創設 株式 一定のベンチャー株式投資で25%所得控除
× 居住用不動産の仕入税額控除の見直し 不動産 賃貸住宅の消費税還付が原則不可に
× 海外不動産の減価償却 不動産 海外中古物件の減価償却による赤字は他の所得と相殺不可に
受取配当の益金不算入の改正 全般 出資比率1/3超~100%未満の配当は、最大で4%課税

賃貸住宅の消費税還付や、海外投資不動産の減価償却を利用した節税に一定の規制がかけられました。
特に個人富裕層の中には、今後の投資戦略に大きな影響を受けた方も多いと考えます。

また受取配当金の益金不算入に関する改正は、法人実務において見落とさないよう注意が必要です。
出資比率が3分の1超~100%未満の子会社から受ける配当は、当該配当金額の4%か支払利子の10%のいずれか少ない金額に課税されます。

 

2021年は中小企業によるM&Aが活発になるとの期待も

 

来年2021年は、中小企業のM&Aを後押しする税制の創設に期待が寄せられています。
中小企業が一定の要件を満たす株式取得M&Aを行う場合、投資時に70%の損金算入が可能になるという制度です。

詳細については改正税制の公表が待たれますが、新型コロナウィルス感染症により損害を受けた企業の廃業を抑止する税制となることを望みます。

2020年ファンド・投資税制④ ~海外不動産の節税防止~

ファンド・投資に影響を与える税制改正の4つめは、海外不動産投資に関連する内容です。
個人が国外中古物件に投資し、多額の減価償却費により赤字を出して他の所得と通算する節税方法が塞がれました。

海外不動産の減価償却による赤字は他の所得と通算不可に

アメリカやイギリスの中古物件の特徴として、築50年以上でも需要が高く、また建物の比率が日本より高い点が挙げられます。
例えば築22年以上の木造居住用物件は4年で償却できることから、投資後4年間は多額の減価償却費を計上可能です。

これを利用した不動産所得の赤字を、個人の富裕層が事業所得や給与所得と通算して節税する方法が流行していました。
物件を売却する際には減価償却が進んだ分だけ多額の譲渡所得が生じますが、5年後以降であれば約20%の分離課税で済みます。
よって、高所得者ほど税率差による節税効果が高いとして、海外不動産投資は人気でした。

税制改正後は、国外中古物件に係る不動産所得の赤字のうち、建物の減価償却費相当額の損失は生じなかったものとみなされます。

海外不動産の税制改正

ただし物件売却時には、その生じなかったものとされた償却費相当額(上図では6,000万円)を取得価額に含めることができます。

既に保有している海外不動産にも適用

上記の改正は2021年分の所得税から適用されます。
そして、2020年以前に購入した物件であっても、不動産所得や譲渡所得の計算に影響が及びます。

その他にも、以下の留意点があります。
● 海外不動産を複数所有している場合、それぞれの建物ごとに計算する
● 黒字の海外不動産と赤字の海外不動産の所得通算は、これまで通り可能
● 耐用年数を簡便法等により計算した場合に適用(法定耐用年数で計算した場合は適用対象外)
● 個人の所得税に適用(法人は適用対象外)

今回の改正により、個人富裕層の海外不動産投資は下火になるでしょうか。
節税商品としてではなく純粋な不動産投資としてブームは続くのか、注目があつまります。

2020年上半期ファンド問合せ状況

ファンド設立に関して2020年上半期も多くのお問合せを受けました。
中でも、ベンチャー投資に関連する照会が目立ちました。

ベンチャー投資に関する問合せが半数

2020年上半期ファンド問合せ(投資対象別)

投資対象別では、ベンチャー投資のご相談が半数を占めました。
適格機関投資家等特例業務によりベンチャー企業へ出資したいというニーズが増えています。
コロナ禍で大規模な金融緩和が世界中で進む中、余剰資金が今後の成長株へ流れ込んでいる様相が見られます。

この他、再生可能エネルギーファンドのご相談が増加しました。
太陽光発電を始め、風力発電・地熱発電と多様化を見せ、再生可能エネルギーへの注目度は引続き高いことが伺えます。

一方、2019年に問合せが多くあった事業ファンドや不動産ファンドは減少しました。

2020年上半期ファンド問合せ(スキーム別)

スキーム別としては投資事業有限責任組合(LPS)が半数近くを占めています。
ベンチャー投資ファンドの増加に伴うもので、反面事業ファンドの減少により匿名組合(TK-GK)  の割合は減少しています。

この他、有料介護施設のファンドを設立したいというご相談もありました。
高齢者社会が進んで福祉の必要性が増す中、ヘルスケアファンドの組成も増えていく可能性があります。

2020年ファンド・投資税制② ~受取配当の益金不算入~

ファンド・投資に大きな影響を与える2020年税制改正の2つめは受取配当金に関する取扱いです。
出資比率が1/3超~100%未満の投資先から受ける配当について、非課税額の計算が変わります。

出資比率1/3超~100%未満の配当は、最大で4%課税

受取配当金は、投資先への出資比率によって課税される割合が異なります。
今回は、出資比率が1/3超~100%未満の投資先(関連法人株式等)からの配当に関する改正です。

出資者に借入等負債の利子がない場合、配当が全額非課税となる点は変更ありません。

一方、負債利子を支払っている場合、課税される金額の計算方法が変わります。
具体的には、今後は以下のいずれか少ない金額に対して課税されることとなります。
●配当金額の4%
●支払利子の10%

すなわち、配当金額に対して最大4%が課税される(96%が非課税となる)ことになります。

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出資比率は100%グループ全体で判定可能に

上表の通り、受取配当金の課税は出資比率によって4パターンに分かれます。
この出資比率の算出にあたり、100%グループ内の会社全体の保有株式等で計算できるようになります。
これには外国法人も含まれます。

今回の改正は、2022年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となります。

ファンド設立に際し、配当の益金不算入を前提にスキームを設計することもあります。
税金をシミュレーションする際には押さえておきたいポイントです。

2019年上半期ファンド問合せ状況

ファンドの設立に関する2019年上半期の問合せを集計した結果、ベンチャー投資関連がトップでした。
そのスキームは、やはり投資事業有限責任組合(LPS)が最多です。

ベンチャー投資と投資事業有限責任組合の組合わせが最多


2019年上半期ファンド問合せ(投資対象別)

ファンドの投資対象別では、ベンチャー投資の件数がトップでした。
ターゲットファンドだけではなく、複数の有望な会社に毎年2~3件ずつ投資したいというご要望も聞かれます。

不動産ファンドは住宅や商業施設だけではなく、古民家やIR(統合型リゾート)といった従来マイノリティに属する物件を対象とするご相談も受けました。
投資に幅や多様性が生まれるのは歓迎すべきと考えます。

半面、去年急増した仮想通貨に関するファンド設立の問合せは、ほとんどありませんでした。
もっとも、最近ビットコインやイーサリアムは市況回復傾向にあり、来年以降はまた勢いを取戻す可能性もあります。

2019年上半期ファンド問合せ(スキーム別)

ストラクチャー別に見ると投資事業有限責任組合が強く、ベンチャー投資とセットで定着した感があります。
但し、民法上の任意組合(NK)として組成することをリクエストされる方も稀にいます。

ファンド設立のスキームは投資対象だけではなく投資家層によっても適否が分かれます。
様々な状況から最適なスキームを選択することが重要です。

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