ファンドへの出資も公正価値評価が可能に

「金融商品会計に関する実務指針」(移管指針第9号)が改正されました。
一定の要件を満たすベンチャーキャピタルファンド等へ出資する場合、当該ファンドの投資先である非上場株式等を公正価値(時価)で評価できるようになりました。

組合が投資する非上場株式等の時価評価が可能に

組合等(投資事業有限責任組合、匿名組合、パートナーシップ等)の構成資産が市場価格のない株式の場合、日本の会計基準では従来取得原価で評価することとされていました。
一方、ベンチャーファンドを中心に、非上場株式等を公正価値(時価)により評価する組合等も増えてきました。

関連コラム:
(2024/9/30) 投資事業有限責任組合は公正価値評価が原則に

ファンドが時価評価を行っても、パススルーで取込む出資者側がIFRSを採用していない場合、これまでは日本基準に従い取得原価に組替えなければなりませんでした。
今後は、以下の2要件を満たす組合等へ出資した場合、時価評価が可能となります。
①組合等の運営者が、財産の運用を業としていること
②組合等の決算において、投資先である市場価格のない株式について時価評価を行っていること

出資者の処理 改正前 改正後

組合等が投資する非上場株式等

取得原価 一定の要件を満たす組合等は時価(公正価値)評価が選択可能に
減損するケース 実質価額(1株当たりの時価純資産評価額等)が50%程度以上低下した場合 時価評価を選択した場合、当該時価が50%程度以上低下したとき
(回復見込があると認められる場合を除く)
注記 時価評価を選択した場合、その旨・選択方針・貸借対照表計上額等を注記

なお、時価評価を選択した場合、評価差額の持分相当額は純資産の部に計上します。

また、時価評価の対象となる範囲について、以下の注意点があります。
・組合等ごとに時価評価を適用するか出資時に選択し、原則として継続適用
・組合等の構成資産が出資者の子会社及び関連会社株式である場合、時価評価の対象外
・ファンド・オブ・ファンズの場合、組合等が出資する別の組合等ごとに時価評価の要件を満たすか判定を行う

本改正実務指針は、2026年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。
2025年4月1日以後開始する事業年度からの早期適用も認められています。

2024年ファンド・投資環境の変化

2024年のファンド・投資環境は、各国中央銀行の政策が転換期を迎えた年となりました。
欧米や豪州などが政策金利の引下げに踏み切った一方、日本は利上げが注目されました。

ファンドに関しては、株高や堅調な不動産市場に支えられて新規案件のご相談も多く、投資意欲の高さを伺わせました。

中小企業のM&Aを税制が後押し

2024年改正項目 影響 内容
事業再編投資損失準備金制度の拡充 株式 株式取得M&Aで損金割合が最大100%に
オープンイノベーション促進税制の延長 株式 25%所得控除のM&A税制が2026年3月末まで延長
暗号資産の譲渡制限で時価評価対象外に 暗号資産 譲渡制限ある暗号資産が時価評価の対象外に
登録免許税、不動産取得税の軽減延長 不動産 個人の住宅用家屋等の軽減税率を延長
× 金・地金等の消費税法制限 仕入200万円で2年間免税事業者等の特例不可に
× 倒産防止共済の損金に制限 全般 解約2年以内の掛金は損金不算入に

2024年の投資関連税制では、中小企業のM&Aを後押しする改正が続きました。
事業再編投資損失準備金制度では、株式取得額の最大100%が損金算入される拡充枠が新設されました。
また、オープンイノベーション促進税制も2026年3月末まで延長されています。

この他、法人が保有する暗号資産の含み益課税も、適用除外となる範囲が拡大されました。

一方、金・地金等の売買や倒産防止共済を利用した抜け穴的な節税には一定の歯止めが掛けられました。

2025年改正ではiDeCoの拠出限度額引上げが注目

来年の税制改正では、以下が挙げられています。
● 企業版ふるさと納税の3年延長
● エンジェル税制の見直し
● iDeCoの拠出限度額の引上げ

iDeCoの拠出限度額の引上げにより、貯蓄から投資への流れは一層加速する可能性があります。
原則60歳まで引出せないなどのデメリットも検討の上、上手に活用すれば資産形成に大きなプラスとなるでしょう。

2021年ファンド・投資環境の変化

2021年のファンド・投資環境は、新型コロナウィルス感染症への対応と経済活動の活性化へそれぞれが取組み、1年前よりも前向きな流れを感じる年となりました。
世界的な金融緩和は続く一方、アメリカでは利上げも意識され始めています。
このように世の中の動きが加速する中、ファンドの組成に関してはこれまでと変わらず多数ご相談を頂戴しました。

中小M&Aで株式の7割損金等、投資や事業承継の後押しも

2021年改正項目 影響 内容
経営資源集約化税制の創設 株式 中小企業M&Aで株式購入額の7割損金に
不動産取得税、登録免許税の軽減延長 不動産 特定目的会社や投資法人等の軽減税率が2年延長
NISA制度の改正 株式 つみたてNISAの延長等
× 社債利子の総合課税対象範囲が拡大 不動産 同族会社を間接的に保有する場合でも社債利子は総合課税に
× 匿名組合の特別償却に制限 全般 匿名組合に対し中小企業投資促進税制の適用を除外

税制改正の目玉として、経営資源集約化税制が創設されました。
中小企業M&Aで一定の要件を満たす株式売買について、購入額の7割を損金とすることが可能です。

また、不動産取得税や登録免許税の軽減措置が2年延長されました。
他にもつみたてNISAの設定期間を2042年まで延長されるなど、税制面から投資を後押しする意思を感じます。

一方、同族会社の社債利子に関し、総合課税の対象とする範囲を広げる等、富裕層の抜け穴的な節税策がまた一つなくなりました。

2022年は富裕層にとって増税方向の改正が多数見込まれる

来年2022年は、富裕層の税制優遇や節税策を縮小・廃止する改正が目立つようです。
● 住宅ローン控除の控除率引下げ (控除期間は長くなる場合も)
● 配当所得の総合課税対象範囲の拡大
● 貸付用の少額資産について損金算入特例の適用除外

少し前まで常套手段であった節税策があっという間に通用しなくなるパターンが随分増えました。
最新の税制や特例措置を確認することが重要です。

2019年ファンド・投資環境の変化

2019年のファンド・投資環境は、高い株価と安定的な為替に支えられて概ね平穏に推移しました。
ファンドの税制や会計に関しても目立った改正はなく、ファンド組成に関するご相談もオーソドックスな案件が多かった年と言えそうです。

2019年は特に大きな改正点はなし

2019年改正項目 影響 内容
不動産取得税、登録免許税の軽減延長 不動産 特定目的会社や投資法人等の軽減税率が延長
× 太陽光発電設備の即時償却規制強化 太陽光 売電の割合が2分の1超の発電設備は対象外に
ビットコイン等の税務・会計方針が明確化 全般 税務上の法定評価方法は総平均法に

不動産取得税、登録免許税の軽減措置は予想通り2年延長されました。

関連コラム:
(2019/9/12) 2019年ファンド税制  ~不動産取得税、登録免許税の軽減延長~

一方、太陽光発電設備の即時償却に関して、ますます制限が強くなりました。
売電の割合が2分の1超と見込まれる発電設備について、2019年4月以降中小企業経営強化税制の対象設備から除外されました。

この他、ビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)について、取扱いがより明確化されました。
税務面では、2つの評価方法(総平均法または移動平均法)のうち、総平均法が法定評価方法とされました。
会計においては、「仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針」の改正草案が公表されています。

2020年は海外不動産や金・地金売買による節税封じ込めへ

今年は税制面で動きがなかった反面、来年2020年は投資方針に大きな影響を与える改正が目白押しとなりそうです。
● 海外中古不動産の減価償却による節税スキームの規制
● 金・地金の売買による消費税還付スキームの規制
● NISA制度の拡充
● ベンチャー投資税制(エンジェル税制)の見直し

特に海外不動産投資は個人富裕層にとって王道の節税スキームであっただけに、改正の具体的内容が注視されています。
投資やファンドの組成は、無理な節税を狙うのではなく、利回りとリスクを吟味して行う健全な姿勢が今後はより重要になると考えます。

2018年下半期ファンド問合せ状況

ファンドの設立に関する問合せ状況を見れば、今勢いがある業界が浮かび上がってきます。
2018年の下半期は、不動産ファンドに関するお問合せが目立ちました。

不動産ファンド、ベンチャー投資に関する問合せが増加

2018年下半期ファンド問合せ(投資対象別)

ファンドの投資対象別では、問合せが多かったのは不動産ファンド、次いでベンチャー投資ファンドでした。
不動産は、特に都心の住宅やオフィス市場が堅調であったのと、不動産特定共同事業法の改正も追い風でした。

対照的に、仮想通貨については、市況悪化を反映してかご相談はめっきり減少しました。
同様に太陽光発電ファンドに関しても、固定買取価格(FIT)の下落もあってか一時期ほどのお問合せはありません。

2018年下半期ファンド問合せ(スキーム別)

ストラクチャー別に見ると、匿名組合(TK-GK)スキームと投資事業有限責任組合(LPS)で全体の9割を占めています。

新しい動きとしては、不動産特定共同事業法の改正により創設された適格特例投資家限定事業スキームが注目されています。
従来よりもリーズナブルにファンドを組成できる新スキームとして、今後積極的な活用が期待されます。

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