投資事業有限責任組合(LPS)の会計規則が改正されました。
改正後は、非上場株式を原則として公正価値により評価すると定められています。
LPSの投資は公正価値評価が原則に
1998年に施行された中小企業等投資事業有限責任組合会計規則が廃止され、2023年12月5日より投資事業有限責任組合会計規則が新設されました。
この間、経済や金融の国際化、IFRSの導入等が進み、海外投資家を一層呼び込むべくファンドの会計基準も変わろうとしています。
会計規則の大きな変更点として、時価とは公正価値であることが明確化されました。
また、改正前の「時価が取得価額を上回る場合には、取得価額によることも妨げない」という記載が削除されました。
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改正前 |
改正後 |
投資の評価 |
時価、但し時価が取得価額を上回る場合には、取得価額によることも妨げない |
原則として時価 |
時価の定義 |
組合契約に定めるところによる |
公正価値評価 |
評価方法 |
組合契約に定めるところによる |
主な評価方法をまとめると、下表のように整理されます。
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評価方法 |
主な対象者 |
公正価値評価 (IPEVガイドライン等) |
マーケットアプローチ DCF コストアプローチ |
● IFRS適用会社 ● 投資事業有限責任組合 (本改正後は原則的な位置付けに) |
旧投資価値評価準則 (経産省モデル等) |
直近ファイナンス価格または回収可能価額(※)のいずれか低い方 |
● 投資事業有限責任組合 (本改正後は例外的な位置付けに) |
金融商品会計基準 |
取得原価 (時価が著しく下落すれば減損) |
● 上場会社(IFRS適用会社を除く) ● 会社法上の大会社 |
税務基準 |
取得原価 |
● 一般の非上場会社 |
※ 回収可能価額は簡便的に投資先の状況に応じて取得価額の75%、50%、25%、備忘価額のいずれかとすることができる
これまで多くの投資事業有限責任組合で見られた取得原価+評価減(直近ファイナンス価格または回収可能価額)方式による評価は、例外的な位置付けとなります。
LPSのモデル契約も公正価値評価のみ例示
投資事業有限責任組合の組合契約書には、経産省が2018年に公表したモデル契約があります。
この別紙3「投資資産時価評価準則」において、元々は2つの評価方法が並列的に例示されていました。
取得価額+評価減方式と、IPEVガイドラインです。
今回の会計規則改正を受けて、別紙3に記載される時価評価準則はIPEVガイドラインに準拠した公正価値のみとされました。
公正価値評価を採用しない場合はLP全員に説明及び同意を
公正価値評価は原則とされたものの、強制適用とまではされていません。
経産省のパブコメによれば、例外として従前の直近ファイナンス価格モデル等の採用も認められています。
新規に設立する投資事業有限責任組合において公正価値評価以外の評価方法を採用する場合、無限責任組合員(GP)がその必要性について合理的な説明ができるかどうか整理した上で、全ての有限責任組合員(LP)の同意を得て組合契約に定めることが想定されています。
また、既存の投資事業有限責任組合についても、途中で評価方法を変更することの要否等を検討することが考えられます。
いずれの場合でも、会計監査を行う公認会計士または監査法人に事前に相談することが望ましいでしょう。
改正後の会計規則は、2024年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。