2019年ファンド・投資環境の変化

2019年のファンド・投資環境は、高い株価と安定的な為替に支えられて概ね平穏に推移しました。
ファンドの税制や会計に関しても目立った改正はなく、ファンド組成に関するご相談もオーソドックスな案件が多かった年と言えそうです。

2019年は特に大きな改正点はなし

2019年改正項目 影響 内容
不動産取得税、登録免許税の軽減延長 不動産 特定目的会社や投資法人等の軽減税率が延長
× 太陽光発電設備の即時償却規制強化 太陽光 売電の割合が2分の1超の発電設備は対象外に
ビットコイン等の税務・会計方針が明確化 全般 税務上の法定評価方法は総平均法に

不動産取得税、登録免許税の軽減措置は予想通り2年延長されました。

関連コラム:
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一方、太陽光発電設備の即時償却に関して、ますます制限が強くなりました。
売電の割合が2分の1超と見込まれる発電設備について、2019年4月以降中小企業経営強化税制の対象設備から除外されました。

この他、ビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)について、取扱いがより明確化されました。
税務面では、2つの評価方法(総平均法または移動平均法)のうち、総平均法が法定評価方法とされました。
会計においては、「仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針」の改正草案が公表されています。

2020年は海外不動産や金・地金売買による節税封じ込めへ

今年は税制面で動きがなかった反面、来年2020年は投資方針に大きな影響を与える改正が目白押しとなりそうです。
● 海外中古不動産の減価償却による節税スキームの規制
● 金・地金の売買による消費税還付スキームの規制
● NISA制度の拡充
● ベンチャー投資税制(エンジェル税制)の見直し

特に海外不動産投資は個人富裕層にとって王道の節税スキームであっただけに、改正の具体的内容が注視されています。
投資やファンドの組成は、無理な節税を狙うのではなく、利回りとリスクを吟味して行う健全な姿勢が今後はより重要になると考えます。

NISAの年齢要件が20歳から18歳へ引下げへ

上場株式を運用するファンドを組成したいというご相談が多くなりました。
NYダウが過去最高値を更新し、日経平均も高値で推移していることが要因と見られます。
日本株投資の支援策として普及が進むNISAに関し、年齢要件を引下げる改正が行われました。

NISAの年齢要件が20歳から18歳に

民法改正により成年年齢が20歳から18歳へ引下げられます。
これに伴い、NISA(一般・つみたて)の年齢要件も18歳以上となりました。
また、ジュニアNISAも18歳未満が対象となります。

NISAの年齢要件引下げ

これらの改正は、2023年1月1日以後に開設される口座から適用となります。

ちなみに、NISA以外では以下の制度についても、適用年齢基準が20歳から18歳へ見直されます。
● 個人住民税の非課税措置
● 相続税の未成年者控除
● 相続時精算課税制度の受贈者
● 贈与税の特例税率
● 非上場株式等の納税猶予制度

NISAの使い勝手は徐々に改善へ

NISAに関するその他の改正点として、一時的に出国する場合の特例が設けられました。
「継続適用届出書」を提出することにより、最長で5年経過した年の12月31日までNISA口座を利用できます。
但し、出国期間中にNISA口座で新たに投資を行うことはできません。

なお、税制改正要望としてNISAの恒久化や、つみたてNISA奨励金の非課税措置などが金融庁から求められています。
もし実現すれば、今後ますますNISAの利用者数は増加するでしょう。
ファンドとは直接関係ないものの、投資環境の向上は株式ファンドを組成・運用する方々にも追い風になると考えます。

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2019年ファンド税制 ~不動産取得税、登録免許税の軽減延長~

ファンドが不動産を取得する際、不動産取得税及び登録免許税が課せられます。
2019年税制改正により、これらの税金に関する軽減措置が延長されました。

ファンドの不動産取得税、登録免許税に係る軽減措置が2年延長

特定目的会社、投資信託、投資法人(REIT)等に課せられる不動産取得税について、課税標準の5分の3軽減特例が2年延長され、2021年3月末までとなりました。

不動産特定共同事業法に基づき取得した新築家屋等に係る不動産取得税についても、課税標準の2分の1軽減措置が2019年3月末まで延長されました。
但し、小規模不動産特定共同事業者等が取得した一定の家屋については、当該特例の適用対象から除外されました。

また、登録免許税の軽減措置も同様に、2021年3月末まで延長されています。
● 所有権移転登記:通常1000分の20 →1000分の13
● 保存登記(不動産特定共同事業法のみ):通常1000分の4 → 1000分の3

不動産取得税
(地法附則11③~⑤,⑭)
登録免許税
(租税特別措置法83の2,3)
特定目的会社、
投資信託、投資法人
5分の3を控除
(5分の2に軽減)
所有権移転:1000分の20 →1000分の13
不動産特定共同事業法
(一定の新築家屋等が対象)
2分の1を控除所有権移転:1000分の20 →1000分の13
保存:1000分の4 → 1000分の3

土地売買、住宅用建物の登録免許税も軽減特例延長に

なお、ファンドに限定された措置ではありませんが、土地売買や、個人の住宅用建物に係る登録免許税についても、引続き軽減措置が適用されます。

所有権移転所有権保存
土地の売買1000分の20 →1000分の15
(2021年3月末まで)
1000分の4
個人の住宅用建物
(新築及び一定の中古)
1000分の20 → 1000分の3
(2020年3月末まで)
1000分の4 → 1000分の1.5
(2020年3月末まで)

不動産ファンドでは、数十億円以上の物件を頻繁に売買することも珍しくありません。
これらの税金がコンマ数%軽減されるだけで、ファンドの収支に大きな影響を与えます。
よって、軽減措置に関して、適用対象及び期限も含めて正確に把握しておくことが大切です。

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投資事業有限責任組合等のファンド監査報酬(2017年度)

ファンド監査の報酬等について、公認会計士協会が2017年度の状況を公表しました。
件数別では、投資事業有限責任組合は増加傾向が続いていますが、特定目的会社はやや減少となっています。

投資事業有限責任組合、特に小型案件が増加

2017年度(2017年4月期~2018年3月期)におけるファンド監査の報酬水準は下表の通りです。

ファンド監査報酬の平均は投資事業有限責任組合で約100万円、特定目的会社で約130万円となりました。
いずれも前年比で増加しています。

また、ファンド監査の件数については、投資事業有限責任組合が794件(前年比+37件)となりました。
投資収益(売上高)10億円未満の投資事業有限責任組合は700件台に乗りました。
ベンチャーファンドを設立する場合の選択肢として、投資事業責任組合の人気は根強いことが窺えます。
また、不動産特定共同事業法の改正スキームに活用できることからも、注目を集めています。

他方、特定目的会社は418件(前年比▲6件)と伸び悩んでいます。
不動産ファンド自体は活況であるものの、匿名組合(TK-GK)や不動産特定共同事業法スキームに押されていることが予想されます。

今年は不動産ファンドやベンチャーファンドの設立のご相談が多く、反面仮想通貨に関連するお問合せは減少しています。
皆様の関心の高い投資対象や、それに関する税務・法務の改正はしっかり注目したいと考えます。

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2019年上半期ファンド問合せ状況

ファンドの設立に関する2019年上半期の問合せを集計した結果、ベンチャー投資関連がトップでした。
そのスキームは、やはり投資事業有限責任組合(LPS)が最多です。

ベンチャー投資と投資事業有限責任組合の組合わせが最多


2019年上半期ファンド問合せ(投資対象別)

ファンドの投資対象別では、ベンチャー投資の件数がトップでした。
ターゲットファンドだけではなく、複数の有望な会社に毎年2~3件ずつ投資したいというご要望も聞かれます。

不動産ファンドは住宅や商業施設だけではなく、古民家やIR(統合型リゾート)といった従来マイノリティに属する物件を対象とするご相談も受けました。
投資に幅や多様性が生まれるのは歓迎すべきと考えます。

半面、去年急増した仮想通貨に関するファンド設立の問合せは、ほとんどありませんでした。
もっとも、最近ビットコインやイーサリアムは市況回復傾向にあり、来年以降はまた勢いを取戻す可能性もあります。

2019年上半期ファンド問合せ(スキーム別)

ストラクチャー別に見ると投資事業有限責任組合が強く、ベンチャー投資とセットで定着した感があります。
但し、民法上の任意組合(NK)として組成することをリクエストされる方も稀にいます。

ファンド設立のスキームは投資対象だけではなく投資家層によっても適否が分かれます。
様々な状況から最適なスキームを選択することが重要です。

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