2015年上半期ファンド・投資環境の変化

ファンドや投資環境にとって2015年はどのような動きが起きているか、この半年間の状況を整理しました。

適格機関投資家等特例業務の改正法案が成立

2015年上半期ファンド環境ファンドに大きな影響を与えるトピックとして、金融商品取引法の改正法案が先月成立し、いよいよ適格機関投資家等特例業務に対する規制強化が決まりました。
適格機関投資家等特例業務によりファンドを設立する場合、49名以下の一般投資家として出資できる層が制限されることになります。
6月3日の公布から1年以内に施行される見込です。

その他の項目はほとんど税制改正に関するものになります。
受取配当への課税強化国外転出時課税制度の創設等、法人・個人問わず課税ベースの拡大という流れが続きます。

一方で、NISA制度の拡充のように一般個人の投資を促進させる動きもあります。
プロ以外の私募ファンドへの投資は規制して、比較的安全なイメージの上場銘柄を推奨しているようです。
しかし、上場企業でも投資被害が頻発している昨今、ファンドも含め幅広い選択肢の中で自身でリスクを検討して投資を判断する方が、長期的に健全な投資環境を育てる上で大切なのではないかとも思います。

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匿名組合出資や非上場株式も対象、1億円以上の国外転出時課税制度

1億円以上の有価証券等を有する居住者が海外へ転居する場合等に含み益に課税される制度(国外転出時課税)が始まります。
適用開始が2015年7月1日と目前ですが、どういうケースが対象か細かい留意点がたくさんあります。

匿名組合出資や非上場株式も対象、1億円以上の国外転出時課税制度

① 非上場株や匿名組合出資も含め有価証券等1億円以上

本制度によって課税される対象は、主に以下の通りです。
● 株式(非上場株式、外国株式も含む)、国債、投資信託
● 匿名組合出資
● ストックオプション
● 未決済のデリバティブ

基準となる1億円は時価評価額のため、株高・円安時においては上場株や外貨建資産により対象となる可能性が高まります。
また、非上場株式であれば会社の規模等に応じて類似業種比準価額方式や純資産価額方式等により評価し、匿名組合出資であれば匿名組合契約が終了したとする場合の分配清算金相当額により評価します。

② 国外転出の前10年以内に日本に住んでいた期間の合計が5年超

就業ビザによる滞在であれば、その期間は国内居住期間から除かれます。
よって、転勤等で日本に滞在する外国人駐在員(エキスパット)が帰国する場合には、本制度の対象とならないことが多いと思われます。

③ 1年以上の海外転勤者、非居住者への贈与・相続等も対象

国外移住だけでなく1年以上海外へ転勤する場合、居住者が非居住者へ有価証券等を贈与する場合等も対象となります。

なお、本制度では納税猶予や、5年以内に帰国した場合における課税の取消しといった配慮措置が設けられています。
但し、この帰国後の課税の取消しについて、帰国まで引続き所有している有価証券等に限る、帰国後4ヶ月以内に更正の請求が必要等の注意点があります。

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投資事業有限責任組合等のファンド監査報酬(2013年度)

ファンド監査の報酬等について、公認会計士協会が2013年度の状況を公表しました。
投資事業有限責任組合と特定目的会社はファンド監査が義務づけられており、監査報酬や時間数等の監査実施状況調査の結果がまとめられています。

ファンド監査報酬の平均はほぼ変わらず、大型案件は増加か

2013年度(2013年4月期~2014年3月期)におけるファンド監査の報酬水準は下表の通りです。
ファンド監査報酬(2013年度)
ファンド監査報酬の平均は投資事業有限責任組合で約100万円、特定目的会社で約150万円となり、前年よりやや減少しているものの大きくは変わらない結果となりました。
最低値と最高値に大きな乖離がある点も同じで、投資事業有限責任組合の最高額は2,380万円と多額です。

一方、ファンド監査の数は減少が見られます。
あくまで公認会計士協会に報告されている数になりますが、投資事業有限責任組合は598(前年比▲36)、特定目的会社は418(前年比▲49)という状況です。
但し、投資収益(売上高)10億円以上の大型案件については、いずれも増加しています。

直近では弊事務所へのファンド設立に関するご相談は増えており、来年2014年度の調査結果ではファンド監査の全体数も伸びるかもしれないと考えています。

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太陽光発電設備の即時償却(一括償却)、適用条件に注意

太陽光発電設備について、グリーン投資減税による即時償却(一括償却)が今月末で終了します。
今後は即時償却を受けるためには、生産性向上設備投資促進税制の適用を検討したいところです。

生産性向上設備投資促進税制では2016年3月まで即時償却が可能

太陽光発電設備を2015年4月~2016年3月までに取得した場合、グリーン投資減税制度では30%特別償却のみが認められます。
一方、生産性向上設備投資促進税制では、先端設備(A類型)または生産ラインやオペレーションを改善する設備(B類型)の要件を満たせば2016年3月まで即時償却が認められています。

グリーン投資減税と生産性向上設備投資促進税制による即時償却

太陽光発電設備以外の風力、地熱等については、いずれの税制でも2016年3月までの取得で即時償却が可能です。
なお、グリーン投資減税制度を適用する場合は取得から1年以内、生産性向上設備投資促進税制の場合は上表の期間内に事業の用に供することが必要です。

太陽光ファンドに個人が投資する場合は即時償却の適用に注意

即時償却や税額控除は、あくまで事業所得の計算にあたって選択適用できる特例です。
よって、個人にとって売電収入が不動産所得や雑所得に該当する場合、即時償却等を適用することはできません。
太陽光ファンドからの分配が雑所得にあたる場合や賃貸ビルに太陽光発電設備を設置している場合は注意が必要です。

最近は太陽光ファンドを新規に設立して売電するケースだけではなく、既存の太陽光発電設備をファンドに売却したいというご相談も増えています。
太陽光を巡る情勢や税制も固定価格買取制度がスタートした時から大きく変化しているため、綿密な検討が重要になります。

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投資事業有限責任組合の基準が今年も改正、ファンド監査報告書や注記に影響

「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」の改正案が公表されました。
昨年公表された「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」 を受けて見直しが行われています。

ファンド監査は「特別目的の財務報告」、「準拠性」の枠組み

投資事業有限責任組合や任意組合に関するファンド監査の多くは、特別目的の決算書を対象とし、準拠性の枠組みであることが整理されました(下表の右下)。
ファンド監査は「特別目的の財務報告」、「準拠性」に該当
ファンド監査報告書においても、従来は決算書が「適正に作成しているか」意見を表明していましたが、新基準によれば会計基準や組合契約に「準拠して作成しているか」について表明することになります。

また、ファンド監査報告書が特定の利用者のみを想定している場合、配布及び利用が制限されている旨を記載します。
例えば無限責任組合員が有限責任組合員のみに提出する場合が挙げられます。

ファンド決算書の注記や業務報告書も改正

ファンドの決算書に注記される情報にも改正があります。
● 財務諸表等作成の基礎:投資事業有限責任組合法や会計規則、組合契約に準拠している旨
● ファンドの存続期限が1年未満になった場合:早期換金化による流動性リスクに言及
● 最終年度に資産の回収及び負債の返済ができなかった場合:早期処分価額での評価に言及

この他、業務報告書にも、過年度に減損した銘柄について投資償却損累計額を記載する等の変更があります。

今回の改正は2015年4月1日以後開始する事業年度からの適用となる見込です。

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