2025年ファンド・投資税制①  ~iDeCoの掛金限度額が引上げ~

iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DCの掛金限度額が改正により増額されました。
加入年齢の上限も70歳未満まで引上げられます。

iDeCoや企業型DCの掛金限度額が引上げ

今回の改正による変更点は以下の通りです。
● 掛金拠出限度額の引上げ
● 加入年齢の上限引上げ:65歳→70歳
● マッチング拠出:企業型DCの事業主掛金を超える拠出が可能に

掛金拠出限度額は下表の通り、特に第2号被保険者はiDeCoの拠出上限が大幅に引上げられました。

  月額(改正前) 月額(改正後)
【iDeCo】
第1号
(自営業・フリーランス等)
68,000円
(国民年金基金と合算)
75,000円
(国民年金基金と合算)
第2号
(会社員・公務員等)企業年金なし
23,000円 62,000円
(企業型DCと合算)
第2号
(会社員・公務員等)企業年金あり
12,000~20,000円
第3号
専業主夫・主婦
23,000円 23,000円
【企業型DC】
確定給付企業年金(DB)
加入者
55,000円
(DBと合算)
62,000円
(DBと合算)
未加入者 55,000円 62,000円

新制度は、今後3年以内に段階的に施行される予定です。

退職所得控除の調整対象拡大に注意

一方で、退職所得控除の調整規定も見直されました。
複数の退職金がある場合、退職所得税が増税となる可能性があります。

すなわち、iDeCoなどDC一時金を支給後、9年以内に他の退職手当等(企業の退職金や小規模企業共済の解約手当金)が支払われた場合、退職所得控除の減額調整が行われます。
改正前は4年以内とされていたため、調整対象期間が5年延びることとなりました。

こちらの改正は、2026年1月1日以後に支払われるDC一時金が対象となります。
既に掛金を拠出・運用しているiDeCoにも適用されるため、注意が必要です。

ファンドへの出資も公正価値評価が可能に

「金融商品会計に関する実務指針」(移管指針第9号)が改正されました。
一定の要件を満たすベンチャーキャピタルファンド等へ出資する場合、当該ファンドの投資先である非上場株式等を公正価値(時価)で評価できるようになりました。

組合が投資する非上場株式等の時価評価が可能に

組合等(投資事業有限責任組合、匿名組合、パートナーシップ等)の構成資産が市場価格のない株式の場合、日本の会計基準では従来取得原価で評価することとされていました。
一方、ベンチャーファンドを中心に、非上場株式等を公正価値(時価)により評価する組合等も増えてきました。

関連コラム:
(2024/9/30) 投資事業有限責任組合は公正価値評価が原則に

ファンドが時価評価を行っても、パススルーで取込む出資者側がIFRSを採用していない場合、これまでは日本基準に従い取得原価に組替えなければなりませんでした。
今後は、以下の2要件を満たす組合等へ出資した場合、時価評価が可能となります。
①組合等の運営者が、財産の運用を業としていること
②組合等の決算において、投資先である市場価格のない株式について時価評価を行っていること

出資者の処理 改正前 改正後

組合等が投資する非上場株式等

取得原価 一定の要件を満たす組合等は時価(公正価値)評価が選択可能に
減損するケース 実質価額(1株当たりの時価純資産評価額等)が50%程度以上低下した場合 時価評価を選択した場合、当該時価が50%程度以上低下したとき
(回復見込があると認められる場合を除く)
注記 時価評価を選択した場合、その旨・選択方針・貸借対照表計上額等を注記

なお、時価評価を選択した場合、評価差額の持分相当額は純資産の部に計上します。

また、時価評価の対象となる範囲について、以下の注意点があります。
・組合等ごとに時価評価を適用するか出資時に選択し、原則として継続適用
・組合等の構成資産が出資者の子会社及び関連会社株式である場合、時価評価の対象外
・ファンド・オブ・ファンズの場合、組合等が出資する別の組合等ごとに時価評価の要件を満たすか判定を行う

本改正実務指針は、2026年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。
2025年4月1日以後開始する事業年度からの早期適用も認められています。

投資事業有限責任組合等のファンド監査報酬(2023年度)

ファンド監査の報酬等について、公認会計士協会が2023年度の状況を公表しました。
投資事業有限責任組合、特定目的会社ともに件数及び平均報酬額の増加が続いています。

投資事業有限責任組合、特定目的会社ともに件数及び報酬水準が伸びる

2023年度(2023年4月期~2024年3月期)におけるファンド監査の報酬水準は下表の通りです。

ファンド監査報酬の平均は投資事業有限責任組合が約130万円、特定目的会社が約190万円と、いずれも前年比でわずかに増加しました。
またファンド監査の件数も、投資事業有限責任組合が1,587件(前年比+177件)、特定目的会社も761件(前年比+67件)といずれも増加しています。

インフレの影響は監査業界にも及んでいます。
人手不足、システム投資の負担増といった傾向は今後も続くと予想され、監査報酬が大きく下がることは当面はなさそうです。

投資事業有限責任組合のLLPによるGP登記が可能に

投資事業有限責任組合(LPS)は、無限責任組合員(GP)と有限責任組合員(LP)から構成されます。
無限責任組合員はファンドの運営を行い、有限責任組合員は投資家として資金を拠出します。
この無限責任組合員になれるのは個人や法人だけではなく、有限責任事業組合(LLP)も可能です。
2023年6月に登記規則が改正され、投資事業有限責任組合の無限責任組合員として、有限責任事業組合を登記することができるようになりました。

LPSのGPとしてLLPを登記することが可能に

投資事業有限責任組合の設立にあたって、有限責任事業組合を組成して無限責任組合員とするケースがあります。
例えば、ファンドを運営する個人や法人が無限責任を負うのを回避するといった理由があります。

この場合であっても、従前は無限責任組合員として登記できるのは個人または法人のみでした。
よって、有限責任事業組合の組合員全員、またはその代表者を無限責任組合員として登記することが行われてました。

今回の登記規則の改正により、有限責任事業組合自身が無限責任組合員として登記できるようになります。
また、既に設立されている投資事業有限責任組合についても、更正の申請により上記扱いが認められるとされています。

投資事業有限責任組合のLLPによるGP登記が可能に

投資事業有限責任組合の柔軟な設計に、登記実務も対応されるようになったのは望ましいことと考えます。

投資事業有限責任組合の海外投資制限が緩和

2024年は投資事業有限責任組合(LPS)に関する法律や会計規則の改正が相次ぎました。
会計面では、公正価値評価が原則とされた他、監査意見の範囲に係る修正もありました。

更に運用面でも、海外投資規制が緩和されるなどの法改正が行われています。

実質支配する外国株式投資は制限対象外に

LPSには、外国法人の株式等への出資割合を50%未満としなければならいない制限があります。
日本の経済活力の向上が元々の制度趣旨として掲げられているためです。
この出資割合は、海外投資額が総組合員の出資履行金額総額に占める割合とされています。

2021年の法改正により、産業競争力強化法に基づく海外投資規制の特例が設けられました。
LPSが経済産業大臣の認定を受けて行う一定の海外投資は、50%比率規制の適用が除外されます。

更に2024年の改正により、国内事業者が経営を実質的に支配し、または経営に重要な影響を及ぼす外国法人も、50%比率規制の対象となる外国法人の範囲から除外されました。
LPSを活用した海外事業投資の促進を図ったものです。

関連コラム:
(2024/9/30) 投資事業有限責任組合は公正価値評価が原則に
(2024/10/31) 2024年投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱いの改正

暗号資産や合同会社の持分もLPSの投資対象に

その他の改正事項として、LPSの投資対象が拡大しました。
暗号資産及び合同会社の出資持分が対象に追加され、スタートアップへの投資環境が改善されました

なお、LPSは法人格を有しないため、合同会社の社員にはなれません。
よって、代わりに無限責任組合員が合同会社の定款や登記簿謄本に記載されることになります。

今回の法改正により、LPSによる事業展開の幅が広がることが期待されます。

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